府内大企業10社が発表した2018年度決算(今年3月発表)で、内部留保(資本剰余金と利益剰余金の合計)額が合計で8兆2559億円となったことが本紙調査で分かりました。前年から4313億円増加し、過去最高規模を更新しています。一方で府内の実質賃金は落ち込んでおり、識者は「輸出大企業は、賃金など経費を抑えて大きく利益を増やし、内部留保を積み上げている。抜本的な賃上げをしなければ経済は好転しない」と指摘しています。

 最も内部留保を積み上げたのは「京セラ」(京都市伏見区)で1兆8039億円。「村田製作所」(長岡京市)の1兆6144億円、「任天堂」(京都市南区)の1兆5690億円が続きます。

 1年間で最も内部留保を増やしたのは、「村田製作所」で、1576億円増やしました。2番目は「日本電産」(京都市南区)で、792億円増の1兆199億円。この上位4社はいずれも1兆円超で、総額6兆72億円にのぼります。

 また、流通大手「佐川急便」の持株会社「SGホールディングス」(京都市南区)が17年12月に東証一部に上場したことから、決算状況が判明し、内部留保17年度の3158億から、3425億円へ267億円増やしました。

 内部留保が増える一方で、府内労働者の実質賃金指数(2015年=100)は、101.9と前年からマイナス2.8へと大幅に落ち込んでいます。名目賃金も前年からマイナス1.8%の100.8と落ち込みました。

■法人税減税で優遇、抜本的賃上げ必要/経済評論家、暮らしと経済研究室主宰・山家悠紀夫さん

 安倍政権のもとで、大企業は人件費など経費を削減し、大幅に利益を上げているのが特徴です。売り上げを大きく伸ばしているわけではなく、相次ぐ法人税減税で優遇され、内部留保が膨れ上がっています。全国で大企業が内部留保を競い合い、貯め込む傾向が強まっています。  内閣府は5月に発表した3月の景気動向指数で、6年2カ月ぶりに「悪化」へ引き下げました。米中貿易摩擦が激しくなる中、大企業も今後の見通しを不安視しています。莫大(ばくだい)な利益を上げているために不況を乗り切る体制はありますが、庶民や中小零細業は景気悪化で暮らしに大打撃を受けかねません。                景気悪化の理由は内需が振るわないことに加えて輸出が落ち込みはじめたことです。賃金が抑えられ、実質賃金が落ち込んでいることが国内の景気を悪化させています。                    そして消費税10%への増税を強行すれば、景気はさらに落ち込んでしまいます。消費税を8%へ増税(14年4月以降)させた影響は現在も続き、景気を低迷させています。                   消費税増税で一番影響を受けるのは賃金が低い層です。増税中止とともに、抜本的に賃上げに踏み切らなければ、経済は好転していきません。