京丹後市と同じ米軍Xバンドレーダーが配備されている青森県で、早くから在日米軍やミサイル防衛の危険性について取材してきた「東奥日報」編集局次長の斉藤光政氏が、このほど、『戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌」』(集英社文庫)を出版しました。一大ブームを巻き起こした「古文書」について10年以上に渡る取材の末、偽書であると証明した迫真のルポルタージュです。

米軍レーダー追及の先駆者

 斉藤氏は1983年、青森県の代表紙「東奥日報社」に入社。在日米軍についての報道や著作で石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞など数々の賞を受賞。「京都に米軍基地いらない府民の会」の結成集会にも参加し、米軍レーダーの狙いについて特別報告しました。

 「東日流外三郡誌」は、青森県五所川原市の和田喜八郎氏の自宅屋根裏から発見されたとする「古文書」で、江戸時代に編さんされ、和田氏の祖先が書き写したとするもの。

 古代、『古事記』や『日本書紀』にも書かれていない王国が津軽地方に存在し、東北地方の有力豪族だった安倍一族が平安時代、朝廷軍に敗れた後、反撃の機会をうかがい安東と名を変えて全国に分散したとする内容。同書の擁護派は、福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず―」の名言ももとは同書にあり、福沢諭吉が借用したなどと主張しています。

 1975年、市浦村(現・五所川原市)の『市浦村史資料編』として刊行され以後、出版社からも刊行されて流布し、真偽をめぐり法廷論争に発展。和田氏は1999年に他界するまで、和田家に伝わったとする「古文書」や関連の遺跡・遺物を「発見」し続けました。

 『戦後最大の偽書事件―』では、斉藤記者が、「東日流外三郡誌」に関わることになった経緯をはじめ、一連の古文書は和田氏と筆跡が一致する偽書であると追及していくプロセスが小気味よいタッチで書かれています。偽書が流布した原因、研究者の責任にも言及しています。

晋太郎夫妻「広告塔」に

 政権に忖度する官僚らによって文書の偽造や捏造が繰り返されているにも関わらず、大手マスコミが批判を手控える傾向にある中で、妥協なく偽書を追及していく斉藤記者の姿勢は光を放っています。

 また、和田氏によって安倍一族の聖地にデッチあげられた神社に、「一族の末えい」と持ち上げられた安倍首相の父・安倍晋太郎氏や洋子夫人が訪れて多額の寄付をし、広告塔として利用された事実の記載には、森友学園問題における安倍首相夫妻の一連の関与を想起させるものがあります。

 ルポルタージュは2006年、新人物往来社から単行本『偽書「東日流外三郡誌」事件』として出版。09年、新人物文庫から同名で出版。今回、改題、全編大幅加筆して集英社文庫から再文庫化。最後に章を起こし、単行本発行後明らかになった事実や「東日流外三郡誌」の評価などについて書いています。巻末の解説執筆はルボルタージュ作家の鎌田慧氏。800円+税。

「京都に米軍基地いらない府民の会」結成集会で特別報告する斉藤記者(2013年5月22日)

(「週刊京都民報」5月12日付より)