リサイタル終了後、音楽仲間や恩師に囲まれ目を赤くはらす東山梓(中央)=15日、京都コンサートホール

 中学校の吹奏楽部で楽器に出会い、立命館高校、同志社女子大学音楽科へと進んだクラリネット奏者・東山梓が15日、自身初のリサイタル(文化庁新進演奏家育成プロジェクト)を京都コンサートホール(アンサンブルホール)で開催。あこがれの舞台での成功に友人らが惜しみない拍手を送りました。

 第1部は、留学したフランスの作品で構成。ドビッシーがバリ音楽院卒業試験課題曲として作曲した狂詩曲で硬さが残っていた東山でしたが、プーランクが旧友の死を悼んで作った難解なソナタでは、フランス仕込みの絹のような柔らかな中低音で悲しみに沈む人々の息づかいを見事に表現し、波に乗ります。

 楽器の魅力を知ってもらおうと選曲した第2部の冒頭は、現代ドイツの作曲家ビットマンの幻想曲。運指を変えず口の締め方などで音程を大きく変化させたり、わざと音を歪ませたり、同時に複数の音を出すなどの現代奏法、特殊奏法を駆使。ポーランドの大家ルトスワフスキの舞踊前奏曲では、色彩の異なる5つの楽章を個性豊かに提示します。

 圧巻は吉松隆の「鳥の形をした4つの小品」。あたかも鳥たちが森で語りあい、飛び回るような躍動感に満ちた世界を、時折、クラリネットの音かピアノの音なのか迷うような親和性に満ちたアンサンブルで表現。同年齢のピアニスト蒲生祥子との交流の深さを印象付けます。

 フィナーレのソナタで作曲者バーンスタイン20代の瑞々しい感性を表した東山は、「恩師や音楽仲間に支えられ、あこがれの舞台に立つことができた」と涙ながらに感謝をのべ、ハンガリーの作曲家の手による「アフター ユー ミスター ガーシュイン」のアンコール演奏で幕を閉じました。