京都弁護士会は2月2日、京都市中京区の京都弁護士会館で「自衛隊について学ぶ市民集会~変わらないのに変えるの?」を開き、安倍改憲の狙いや、米軍と自衛隊の一体化の実態などについて考え合いました。

 同会の浅野則明会長があいさつ。安倍政権が狙う憲法9条への「自衛隊」の明記について、「安倍首相は憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を容認し、安保法制を強行した。これによって制限のないフルスペックの集団的自衛権の行使が可能になっている」と指摘。米国とともに武力行使が行われる危険性を指摘し、「日本国憲法の恒久平和の原則が変わってしまうおそれがある」と警鐘を発しました。

 元陸上自衛隊レンジャー隊員の井筒高雄さんが講演。井筒氏は1988年に陸上自衛隊に入隊し、91年にレンジャー隊員となり、93年に依願退職。2017年に元自衛隊員らでつくる「ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン」を結成し、戦争の現実や自衛隊員のPTSD、軍事費の問題などを伝える活動をしています。

「感謝」の一方で、隊員の命と補償はコストカット

 井筒氏は、安倍首相が昨年10月の自衛隊記念日観閲式での訓示の際に、「全ての自衛隊員が強い誇りをもって任務を全うできる環境を整える」と強調したことを紹介し、「安倍首相は自衛隊員に『誇りを持て』とか『ありがとう』などと述べる一方で、隊員の命と補償はコストカットしている」と述べ、殉職した自衛隊員の補償金が十分に支給されていない現状や、補償額が減額されている実態を告発しました。

 自衛隊の任務の変遷について解説。PKO関連法が92年に成立し、「国際協力」が任務に追加され、03年のイラク特措法による初の海外派兵、15年の安保法制成立により海外での任務へ拡大しているとし、「『専守防衛』は事実上、失われている。自衛隊員がシビリアンコントロール(文民統制)について教育を受ける機会もない。上官の任務どおりに動く教育を課せられており、自衛隊の行動に歯止めをかける手立てがない」と指摘しました。

 15年4月の新「日米防衛協力のための指針」(日米新ガイドライン)について、「自衛隊の組織が再編され、米軍と一体で作戦を実行できる組織になっている。日米共同訓練が何度も行われ、米軍の下請け状態となっている」と指摘しました。

 また、F35戦闘機105機の購入に1兆3000億円、イージス・アショア2基の配備に6000億円、不平等な「FMS」(対外有償軍事援助)方式による米国製兵器の〝爆買い〟などの事態が生まれているとし、「行政サービスがカットされる中、米国の兵器購入など巨額の軍事費が使われている。自衛隊の現実を知り、戦争のリアルに向き合い、米軍と同じ行動をすることが本当に必要なのか考えていくことが必要」と強調しました。

 参加者から、日本の軍事費や米軍関連費用について、米国との軍事一体化の実情などについて質問があり、井筒氏が回答しました。