「8時間働けばふつうに暮らせる社会へ」とアピールするロゴを手に語り合う倉林さんと上西さん

 参院選で再選をめざす日本共産党の倉林明子参院議員(京都選挙区、改選数2)と、「働き方改革関連法」に関し、厚労省が「裁量労働制で働く人の労働時間が、一般の労働者よりも短い」としたねつ造データ問題の第一発見者で、「国会パブリックビューイング」を発案し広げている法政大学の上西充子教授が対談。安倍政権の暴走政治を終わらせるたたかいの課題、展望などについて語り合いました。

 倉林明子 新年、おめでとうございます。

 上西充子 おめでとうございます。

 倉林 安倍政権の論点ずらしの答弁を例えた「ご飯論法」(*)が、「2018ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に入賞され、私もうれしく思っています。それに、国会の審議を街頭で上映する「国会パブリックビューイング」(以下、国会PV)という新しい手法でのご活躍に敬意を表します。

 上西 ありがとうございます。「国会PV」は、「働き方改革関連法」をめぐる国会審議の問題点を多くの人に知ってもらい、「高度プロフェッショナル制度」を会社で導入させない取り組みが大事だと思って始めたんです。第1話「高プロ危険編」に続き、第2話「ご飯論法編」もできましたよ。

 倉林 すごいですね。安倍政権は昨年、「働き方改革関連法」、障害者雇用の水増し問題、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改定など、公文書やデータを改ざんまでして悪法を次々、数の力で強行しました。

 上西 しかも、虚偽答弁や論点をずらすなど、国会審議を分かりにくくするのが特徴ですね。みんなで監視することで不誠実な行為の抑止効果になればと思っています。

 倉林 国会審議を見える化(可視化)して、異常さを伝えていかないといけませんね。

国会審議にもっと注目を/上西さん

上西さん
「不断の努力」で政権を監視

 上西 「国会PV」は、家の軒先でとか、「出前」と称する室内上映会もあり、みんなで見る楽しさ、自分でもやってみようという楽しさがあります。京都での上映も活発なんですよ。

 倉林 各地でどんどん広がっているのはうれしいです。

 上西 今年は「国会PV」で新語・流行語大賞を狙おうかなって思っています。(笑い)

 倉林 楽しみですね。

 上西 国会のありようって、実はみんなが関心を持てるテーマ、持たなきゃいけないテーマですよね。国会審議も、選挙と同じくらい注目があってしかるべきだと思うんですよ。

 倉林 その通りですね。国会に送った代表が法律や物事を決めるわけですから。

 上西 だから、野党の追及が甘いみたいに言って、問題点をそらさせてはいけません。

 倉林 ほんとそうですわ。安倍政権は、平気で日本国憲法も変えようとしていますからね。

 上西 そう。憲法ではね、12条の「不断の努力」が大事だと思って、いま行動しています。放っておいたら、政権側はもっと好き放題の方向に行きます。

ヒアリングは野党の慣例に

 倉林 なるほどね。先生には「働き方改革関連法」の際には、毎回のように野党合同ヒアリングに来ていただきました。合同ヒアリングは今や野党の慣例になっています。

 上西 裁量労働制のデータ改ざん、高プロ反対で、野党の議員のみなさんが一致されてね。

 倉林 森友・加計疑惑、官僚のセクハラ事件などでもそう。認識を共有し、野党がブレない論戦ができるようになっています。

 上西 問題意識が共有されることはすごく大事ですね。

 倉林 ええ。野党共闘は、安保法制=戦争法撤回の一致点に始まってから3年余。安倍政権の暴走ぶりがエスカレートする一方で、それに抗する野党共闘が、質の面で大きく前進していると感じています。

 上西 そうなんですか。

 倉林 政策での共通項が広がっています。

 上西 市民の側からも、原発や労働問題での法案が作れないかと声がでていると聞きます。

“共闘”から新しい政治へ/倉林さん

倉林さん
一致点増やし安倍政権倒す

 倉林 そこがキーワードです。市民の声が政策になり、野党が共通政策で本気で団結できるようになると、安倍政権に代わる政権の姿が見えてくると思います。

 上西 安倍政権じゃなくて、こういう政策のところに任せたいというふうにね。

 倉林 そうそう。9条改憲は安倍政権の下では反対、原発ゼロは野党4党で一致でき、消費税の10%増でも10月実施はだめだと、一致できそうですし。

 上西 安倍政権は結局、「財界の意向をくむ政府」だとわかりやすくなり、私たちのための政府ではないんだということが全体的にわかりやすくなっていますよね。

 倉林 今年は統一地方選挙、参院選挙と全国的なたたかいがあります。日本共産党としても野党の政策的な一致点を増やし、打倒安倍政権にとどまらない次の政治の希望につなげるため、奮闘したいと思っています。

 上西 論点をはっきりさせた共産党の質疑は面白い。質疑時間の確保のためにもちゃんと議席も取ってもらわなきゃ。ぜひとも応援したいです。

 倉林 力強いお言葉、ありがとうございます。今年もがんばります。

 うえにし・みつこ 1965年生まれ。東京大学卒業、同大学院経済学研究科博士課程を単位取得退学。労働政策研究・研修機構(厚生労働省の所管)の研究員を経て、法政大学キャリアデザイン学部教授。閣僚の論点をずらす答弁を表現する「ご飯論法」の生みの親。「国会パブリックビューイング」代表。

 「ご飯論法」とは 「ご飯論法」とは、意図的な論点ずらしの答弁手法を表す言葉。「働き方改革関連法」の審議で、加藤勝信厚生労働大臣(当時)が行った悪質な論点ずらしの答弁を、「朝ごはんを食べたか」の問いに「ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておく)」と答えるようなやりとりだ、と指摘した上西教授のツイート(18年5月)を受け、紙屋高雪氏(ブロガー・マンガ評論家)が命名。「セクハラ」という言葉の効果に学び、抗議・抑制の力となることを期待して広げられています。