府が亀岡市で建設を計画している球技専用スタジアムをめぐり、スタジアムの所有権は府が持ったまま、運営権を民間企業にゆだねる新たな手法を導入しようとしています。府民のためのスポーツ施設から、企業主導で「稼ぐ」ことを目的化するスタジアムとなることに、市民や専門家から批判の声が上がっています。

■「商業・観光拠点の一体的整備」明記

 府がめざしているのは、スタジアムの所有権は府が持ち、運営権は民間企業が長年保有する公共施設等運営権(コンセッション方式)によるPFIという手法。全国にもスポーツ施設が同方式で運営された前例はありません。

 府は3月、同方式の導入可能性調査業務を約1900万円で「PwCアドバイザリー合同会社」と随意契約(公募プロポーザル)し、8月にも同社と約1000万円で運営事業計画の策定業務を契約。同事業を推進する国に交付金を申請しています。

 また、10月26日には、安倍政権が進める「地方創生」の推進交付金(5年総額で24億2600万円)を申請。その事業計画書では、「京都スタジアムの整備を契機として、スポーツ施設を中核に商業・観光拠点を一体的に整備し…『稼げるまちづくり』を進める」としています。また商業ゾーンの建設、音楽イベントの実施、ネーミングライツ(命名権)導入などを明記しています。

 元中学校教諭でサッカー部の顧問をつとめた荒木克幸さん(亀岡市)は、「そもそも水害の拡大やアユモドキへの影響など、問題だらけの建設で、サッカーファンからも批判の声が上がっています。稼ぐことを目的にしたスタジアムでは、プロチームとイベントのみの使用で、子どもたちがプレーできるとは思えない。スポーツ施設の充実を望んでいた府民の声にもこたえていない。建設は中止すべきです」と話します。

PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ) 公共施設などの建設、維持管理、運営などを民間資金や経営能力を活用して推進する手法。
コンセッション方式 公共施設等運営権制度を活用したPFI事業…施設の所有権は公的機関が持ったまま、民間事業者が事業運営に関する権利を長期間にわたって持つ方式。現在、空港や道路などで実施されており、水道や、同スタジアムのようなスポーツ施設への導入を推進しています。

 
■スポーツ振興の理念ない/共産党府議団・加味根議員

 スタジアム建設をめぐっては、水害拡大の懸念や、周辺に生息する国の天然記念物「アユモドキ」が絶滅するおそれなど多くの問題を抱えています。市民や専門家からも建設反対の声が広がっており、中止すべき事業です。
 私たちは、そもそも府のスポーツ施設は貧弱であり、充実を求めてきました。しかし、今回のコンセッション方式は府民の施設を民間企業に丸投げして「稼ぐ」ことを目的化しています。府民のスポーツ環境整備ではなく、民間企業のもうけのために建設するようなことは許されません。
 府民が建設に反対するなか、山田知事は来年1月までの着工をめざし、事業を強行しています。府民とともに建設中止へ全力を尽くします。

(写真=スタジアムの完成予想図〔住民説明会の資料より〕)

(「週刊京都民報」11月19日付より)