急増する違法「民泊」に対し、門川市長は「取り組みを強め、京都らしい良質な宿泊施設を確保していく」(2月定例会代表質問答弁)と宣言します。しかし、異常なまでの「民泊」ブームで京都の町はどうなろうとしているのか、その実態を追います。

■伏見稲荷近く、好立地に進出

 「すさまじいなんてもんじゃないですよ」。伏見区砂川学区に住む小林康博さんは、こう話します。

 砂川学区は、外国人観光客に大人気の観光スポット、伏見稲荷大社まで徒歩で5分~15分という〝好立地〟。一帯は戸建てが多い住宅地で、これまで旅館とホテルは1軒ずつしかありませんでした。そこに、外国人宿泊客を目当てにした民泊が次々と開業。現在、旅館業法に基づく許可や申請を予定する宿泊施設(主に民泊)数は、合計19軒に達します。学区の中心を通る稲荷勧進橋線の600㍍の間(地図参照)を見ても、許可済みや申請予定の施設は計10軒に及び、それとほぼ同数の9軒が無許可営業の違法民泊。さらに2軒のホテル建設予定地が加わります。

 小林さんの自宅の2軒隣は違法民泊で、宿泊客が夜中に大騒ぎしたり、タバコのポイ捨てが問題に。市に業者への指導を求めましたが、「管理者不明」として〝野放し〟のままです。その上、自宅の隣には4階建てホテルが建設中です。

 住民が暮らし、地域コミュニティを作ってきた「住む」場所に、「泊まる」ための場所が入り込めば、さまざまな問題が発生するのは当然です。
 「住民の高齢化で空き家になったところが、いつの間にか民泊、ホテルや。違法民泊は数も分からん。治安、火災、衛生・・・。一体この町はどうなるのか」

■ブームの背景に投機の動き

 市内全体で、簡易宿所(民泊)の施設数(グラフ参照)は昨年12月末には1257軒。15年度末の696軒から、ほぼ倍増しました。民泊仲介サイト最大手のエアビーアンドビー(Airbnb)は、無許可民泊も〝堂々〟とサイトに掲載しており、市内の民泊数は、約4650軒(2月6日、市調査)に達します。

 なぜ、ここまで民泊がブームとなるのか。京都市内をはじめ、全国で民泊建設を進める不動産会社(東京都)の代表取締役で、「民泊投資専門コンサル」の白岩貢氏は、自身のブログにこう書き込みました。「戸建て賃貸の普通家賃、月額9万8000円」が「簡易宿所(民泊)なら、(約5倍の)月平均43万2365円」になる──。民泊は、大手や東京資本の投機の対象となっています。

■住民が追い出される

 「これ、見てもらえますか」。南区の九条塔南学区に住む富田秀信さんが一枚のビラを差し出しました。

 東寺の南側にある同学区は、砂川学区と同様に宿泊施設にとっては絶好の場所。ビラは昨年6月、大手不動産業「センチュリー21」(東京都)の加盟店が、目星をつけた住宅に配布した不動産売却の〝お誘い〟です。物件を「一筋一筋、歩いて探し」、所有者を「法務局で登記を申請して知ることができた」とし、宛名も書かれていました。

 ビラ配布から約9カ月。富田さんは、住民が次々と追い出されていくことに、あぜんとしました。「1980年代後半に横行した地上げの再来か…」。自宅の斜め向かいの家は空き家となり、民泊が進出予定。東寺の真向かいで、八百屋など4軒があった一角は2月に更地になり、旅館業計画の標識が立ちます。民泊の隣の家屋もつぶされ、民泊となる計画です。

 住民合意のない「民泊反対」。伏見区藤森学区自治連合会は、住民が住み続けられなくなる「民泊」に、ノーを宣言。14日、1軒については、事業の再検討を勝ち取りました。

 同学区は、砂川学区から約2・4㌔東南に位置し、京阪墨染駅周辺に広がる地域です。自治連合会が対策を強化しているのが、3町内の民泊計画です。どれも住宅地にあり、2戸1などの連棟式住宅や、隣家との境界が15㌢もない建売住宅のど真ん中に予定されています。住民らはこのままでは移転しかないと言い、「民泊反対」のポスター40枚を張り出しました。

 対策に当たる同連合会副会長の中村隆さんと田村権一さんは、声をそろえて言います。「住民が住んでこその町でしょう」

(写真上=隣に民泊が予定され、反対のポスターを自宅に張った住民と〔左から〕田村、中村両氏。写真下=住民運動に押され、業者が計画を再検討するとした藤森学区の民泊予定地

(「週刊京都民報」3月19日付より)