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(参院選では従来、自民党比例候補のポスターが張られた京都JA会館〔写真下〕。今回は一切張られていません)。

 安倍政権が進めるTPPなど農業つぶしの政策に対して、農家の怒りが広がっています。そうしたもと、長らく自民党を支えてきたJAグループ京都の政治団体「京都府農協政治連盟」(京都府農政連)が今回の参院選で、同党候補の推薦を見送りました。10日の投票日を前にして、農業団体の役員や農家からは「当然のことや」「共産党が一番わしらに近い」との声が上っています。

■農協理事「共産党政策が一番近い」
 
 農協理事を務める男性は自民党への怒りをあらわにします。「3年前の参院選で、自民党の現職議員の比例候補を押し上げるため、京都の農政連は相当がんばった。政権とのパイプが大切やと思ったからだ。それなのに、安倍政権はわしらのことを無視してTPP推進とは…。自民党候補を推薦するわけにはいかん」。一気にまくしたて、最後に付け加えました。「共産党はTPPに断固反対し、地域の農業を守ると言っている。我々に一番近い」

 JAグループ京都(中川泰宏会長)は5つの単位農協を持ち、組合員数約13万8000人(2015年7月現在)を抱える組織です。府農政連は毎回の参院選で、全国農政連が擁立する自民党比例候補を推薦。農協の建物に候補者のポスターを張り、職員や理事を中心に後援会入会・票集めを依頼するなど、「JAグループと一体に選挙活動を進め」(推薦決定文書)てきました。

 ところが、今回の選挙は一変しました。全国農政連が推す自民党比例候補は、熊本県内の元JA組合長で組織内候補にもかかわらず、府農政連は推薦を見送りました。府内の各農協には候補者ポスターはなく、3年前は候補者自ら各農協の理事会に2回、3回と足を運び、あいさつをしましたが、それもありません。北部にある支店の職員は「選挙になると職員の机に候補者の小さなのぼり旗が立てられ、自民党一色だったのに…。驚きだ」と言います。

 京都に加え、青森、岩手、宮城、秋田、山形、石川、三重、高知、佐賀の10府県の農政連が自主投票を決定しました。背景にあるのは、安倍政権が昨年10月、TPPについて大筋合意したことへの怒りと反発です。

 JA京都やましろの十川洋美組合長は月1回発行の同JA機関誌で、「TPPで海外農業との競争にさらされたのでは、日本農業の弱体化に拍車をかける」と政府を繰り返し批判してきました。

 亀岡市で60頭の牛を飼う男性は、搾乳の手を休めて訴えます。「政府は大型化で競争力をつけろと言うが、オーストラリアの牛乳は国産の20分の1の価格。TPPでそんな安い輸入品が入ってきたら、わしら小規模酪農家はつぶれるしかない。安倍は絶対アカン」

 府南部。朝5時前から農作業に追われる男性は「TPPで安いコメが流入すれば、さらに米価が下がり農家は食えなくなる。そんな時に元JA組合長でも自民党候補の支持はできんだろ」と言います。

 進む自民党離れ。農家の怒りはこれだけではありません。安倍政権は昨年、農協「改革」法を強行可決しました。「改革」の柱は▽農協の非営利規定を削除し、株式会社に変質▽農地の番人である農業委員会の公選制を廃止し、制度を骨抜きにする―ことで、狙いはTPP反対を訴えてきた農業組織の解体です。

 京田辺市の茶農家で府農業会議副会長の林良嗣さんは、地元自民党府議の後援会長を務めますが、安倍政権への反発を隠しません。「TPPに農業組織つぶし。それに安保法制…。今度の選挙は、共産党がどれだけ伸びるかがカギや」

 長年自民党を支持してきた舞鶴市の農事組合長は言います。「共産党に頑張ってもらわんと」

(「週刊しんぶん京都民報」7月10日付より)