スイセン 向日市にある向日神社に西側を流れる小畑川の今里橋附近の堤には満開の白い花のスイセンが群生しています。
 スイセンの学名はNarcissus tazetta( その変種はNarcisus tazetta var. chinensis:和名は水仙で漢名の音読みです。12月ごろから水気のあるちょっとした空き地や堤防や民家の鉢植えにぽつりと咲いていたり群生して咲き、日常的に見かける花です。芳香ある白や黄色の花(ピンクや赤色もある)を数個つけて咲いています。
 原産地は主にスペイン、ポルトガルや北アフリカなど地中海沿岸地方で原種は30種類ほどと言われています。日本には中国を経由して渡来し野生化もしました。学名のナルシサスの由来はギリシャ神話に登場する美少年ナルシサス(ナルキッソスとも)の名前からです。たくさんの女性から言い寄られてもぜんぜん相手しなかった高慢な美少年のナルシサスです。やがて女神ネメシスが復讐します。ナルシサス少年が水鏡に映った自分の姿に恋をするようにしたのです。ナルシサスは毎日水鏡を見つめて告白するのですが水鏡はなんら応えてくれず、憔悴して死にます。そして死後、彼の体は水辺にうつむく美しい花の姿になってしまったというお話です。
 一方、漢名の水仙は「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」」という中国古典に由来し、スイセンの美しい花の姿とその芳香がまるで水仙のようだと名付けられたそうです。別名には寒い雪の咲くので「雪中花」の。スイセンを観た時はそんなお話を思い浮かべてみるのもホッとしますね。
 さてスイセンは秋に咲くヒガンバナ(彼岸花・曼珠沙華)とは兄弟です。ヒガンバナ科ですからリコリンとシュウ酸カルシウムなどを含み有毒で、10グラムが致死量で、ユリ科の浅葱(あさつき)や韮(ニラ)と間違えて食べ、重度の食中毒になるケースが報告されていますので、注意しましょう。(仲野良典)
 「カシオペア もう水仙が咲き出すぞ おまへのガラスの水車 さっさとまはせ」(宮沢賢治)
 「水仙は白砂ごろもよそほへど 恋人待たず香のみ焚く」(与謝野晶子)