樋口陽一東大名誉教授講演 参院選で自民党や維新の会が憲法改正発議要件を緩和する96条改正を公約に掲げるなか、「96条の会」代表の樋口陽一東京大学名誉教授が16日、同志社大学(京都市上京区)で講演し、「権力を縛るという立憲主義は憲法の存在理由。96条を単なる手続きとして安易に変えようとする動きを黙って見過ごせない」と同条改正に警鐘を鳴らしました。
 同大大学院グローバル・スタディーズ研究科主催の講演会「立憲主義と平和主義」でのもので、市民ら約500人が参加しました。 樋口氏は、民意で政治を動かす民主主義と立憲主義の関係は突き詰めれば緊張関係にあるとして、「民主主義の権力をも制限するのが立憲主義。両者のバランスを規定するのが96条であり、これを時々の単純多数で変えてはいけない」と述べました。
 さらに立憲主義と平和主義の関係に触れて、日本以上に立憲主義の理念を尊重している欧米諸国が第二次大戦後も人間を手段として使う戦争を止められないでいる世界の現状をあげ、「だからこそ、日本社会から憲法9条の意義を発信し続け、『個人の尊重』という立憲主義の究極の実現に挑まなければならない」と訴えました。
 講演後、「96条の会」発起人や賛同者の研究者、弁護士ら7人がリレートーク。石川健治東京大学教授は、「特定の運動の発起人になったのは初めてのこと。96条改正の動きはそれだけ恐るべき事態であるし、危機感を共有してほしい」と述べました。NGOヒューマン・ライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士は、「国防軍創設や基本的人権の制約など自民党改憲案は独裁国家の憲法と同じ。近年、国際会議などでの日本の印象が好戦的で歴史認識や人権を軽視する国へと変わりつつある」と報告しました。