天得院 三門(国宝)や禅堂、東司(とうす)、浴室(いずれも重文)などで有名な臨済宗東福寺の五塔頭(たっちゅう)の一つ、天得院は四季折々の花の寺としても知られています。6月中旬からポツポツ咲き始めた紫や白のキキョウは今が見ごろ。
 天得院は1346から70年ごろ開創されましたが衰退し、1614年に再興されました。その時の長老が家康の豊臣攻撃の口実になった方広寺鐘名の「国家安泰 君臣豊楽」を撰文(せんぶん)したのが当院の清韓長老。その後も幾たびかの変せんを経て1789(天明9)年に再建されました。
 桔梗が美しく咲き乱れる枯山水の庭園は桃山時代に作庭され、青々とした杉苔と岩に包まれるように、御衣黄桜、キリシマツツジ、サツキ、キキョウ、萩、白色彼岸花、紅葉、ツワブキと四季折々の花が彩ります。特に初夏の桔梗と秋の紅葉は美しく多くの拝観者が訪れます。
 参観者のみなさんは庭園を見るなり「ウワッ! すばらしい庭園ね。桔梗がきれい!」と今を盛りの桔梗庭園にうっとり。縁側に座ったり、写真を撮ったり堪能しています。日没後はライトアップされ幻想的です。境内には関東大震災前後に妻子と母を失い当院に隠棲した歌人の荻原井泉水(おぎわら せいせんすい)が当院で詠んだ句の碑が建っています。(仲野良典)
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 「石のしたしさよしぐれけり」(井泉水)(桔梗の特別拝観=7月17日まで、午前9時半から午後8時半まで)