府営水道と大山崎町の水道事業について、水道懇と府の回答を受けて、真鍋宗平大山崎町長が10日、「町長からの発言」を発表しました。全文を紹介します。
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「大山崎町長からの発言」
京都府営水道と大山崎町の水道事業
2007年12月10日 真鍋宗平
はじめに
 「はじめに7300㌧維持ありき」では、大山崎町の水道会計の行き詰まりは越えられない。その矛盾の解消をめざして条例による協議を求めたが、11月30日の府の回答は、とても前向きとはいえなかった。10月11日の「町の水道会計の経営健全化が重要課題・町府ともに努力が必要・今後の情報共有」とする府と町との「確認」を、むしろあいまいにしかねない点もあった。
 しかし、協議の必要性を認めたことは意味がある。これ以上、後退することなく、先に進むことを望む。
1)真摯
 京都府知事名による平成19年11月30日付「回答」文書をお届けいただいた。一読して驚いたことがある。
 回答のお約束から、実に25日かかって届いた文書の、第1項に「2月以来条例に規定する協議を真摯に行っているところ」とある。
 条例による協議は、受理して後の手順であるから、当初来本町が求めてきた「3407㌧の受水申込」を認めていただいたことになると読めないこともない。その限りでは府の認識の変化のようにみえるが、この間の「白紙撤回」への強圧的な対応は、およそ手続き条例に定める「協議」の主旨に沿うどころか、あれではとうてい「真摯」であったとは言えない。
2)がっかり
 2月26日の「協議」は、とりわけ強圧的な姿勢が露骨だった。府は「協定と申込の水量の相違を認めない」と、荒々しくそればかりをくり返し、こちらの話など聞く耳もなかった。「真摯」とは遠い。「懲罰的」な対応だった。
 今後の調整・協議への誠意を疑うほかない、府のこの日の対応に、ぼくはがっかりした。それで翌朝、本町水道部長(現理事)に、水量申込書を府企業局に持参するよう指示した。2月27日、指示は実行され、本年度の申込書は企業局に届いた。
 ところが、提出した町長公印による申込文書が、電話での通告後、普通郵便で返送されてきた。乱暴な対応で、これには驚いた。当方は即刻、同じ手法で企業局宛送り返した。
3)不受理
 以後、京都府は「申込は受け付けられない」として「不受理」の対応を一貫した。一時は申込文書そのものの存在さえ言及しなかった。
 その後も、府は一貫して「不受理・撤回せよ」の姿勢をゆずらなかったので、その結果として一切の協議は拒否された。これに呼応して、話し合いに入れない状況にあることを町の瑕疵とする非難の声が、しきりに起こった。
 協議の結果である「決定」に進めない府は、請求行為にも入れない。これもまた、町の責任だと責める向きがあったが、当方が拒んだ経過は、全くない。
 10月2日京都府議会委員会で、企業局長が、本町の水量申込について「条例にもとづく協議はしていない」と答弁している。だから、少なくともこれ以前に「受理」の認識はなかったのだろう。「2月の事前協議を含め、条例に規定する協議を行っている」とする今回の回答には、ずいぶん無理がある。
4)拒否
 2月26日段階では、府は町に「検討会参加を要請」し、町は府に「前年度来の経過を踏まえて、とうぜん参加する」旨を、相互に確認した。
 それが、申込以後、「参加は白紙撤回が前提」との制約を付した。したがって、これ以降の案内は、口頭であれ、文書であれ、「参加案内の形式を取りつつ、参加を拒否する」ものとなった。
 4項で府が「これまで同検討会への参加についても要請してきた」と答えている、この「要請」は、「表現要請、実は不可」にあたるのだろう。
 これでは、当方が勝手に不参加の道を選択したとでも言わんばかりである。むろん、そんなことは全くない。参加意思は当初以来確認してきたところで、以後変わらない。
5)検討会
 乙訓の「市長会」で「3水系統合」を統一課題とする従来の確認をこえて、「単価引下げ」を対府要請項目に加えることに同意した本町は、府による申込撤回の前提に阻まれ、けっきょく検討会の席を与えられなかった。その結果、府の言う「経営努力」を協議の中で表現する機会を得ないまま、単価引下げの方向で、とりまとめは、水道懇に諮られた。
6)水道懇
 水道懇にも大山崎町の席はない。したがって大山崎町に関わる情報は、主として府を通じて行われる報告にもとづき、それが議論に反映される。
 本町の望む委曲は尽せない。
 ただし、水道懇は直接的には府町間の行政的な課題に関わらない。そういう前提であることを、水道懇で確認しているから、本町も乙訓地域の利害を委ねている長岡京市長をこえて、独自の発言は差し控える。
 それにしては、懇談会席上の論議は、おおいに大山崎問題にふれ、それも相当に当事者の意を遠く離れる論調を含んだというから、「直接的に府町間の行政的な課題に関わらない」とした水道懇の原則は、形骸に帰したのだろうか。
 情報の不正確も、原則のあいまいなことも、本町は望まない。
7)府営水道
 水道懇は、そもそも府営水道経営の安定的維持を課題とする。協定による水量配分はその基本的前提だから、とうぜん受水自治体にその遵守を求めなければならない。
 むろん、そこに生じる矛盾を改める仕組も配慮も備わっている。ただし、解決に要する時間的、制度的制約はある。
 大山崎町の水道会計の破綻状況は切迫しているから、当面は水道懇に関わることなく「個別の問題」として府との調整に委ね、条例にもとづく水量申込を契機として、問題解決の協議を求めた。
 府営水道の経営主体は府が担うところで、併せて、その運用にあたっては、条例に沿うことが義務付けられている。
8)町営水道
 大山崎町は15000人の水道供給に責任を担う。
 本町水道会計は、2000年10月の府営水道導入により、赤字構造に転じた。現在累積赤字6億4000万円をこえ、破綻状況にある。原因が府営水の過大な負担にあることは、誰もが認めるところだろう。本町議会の認識も一致して、この点を基本的な課題としてきた。
 本町の府営水道からの受水量は、必要水量の3倍。水量も負担の重いことにおいても、突出している。「工業用水相当分も固定費の内」だというのでは、その負担のあり方を含めて、古い話を持ち出したくなって当然だろう。
 府営水導入後の本町水道事業の「経営努力」は、値上による住民負担も含めて並み大抵ではなかったが、それでも赤字構造の深刻さは変わらなかった。むろん、今後も努力は継続する。
 改善の鍵を握る「水量」に踏み込むために、手続き条例にもとづく減量申込をしたことによって、上位自治体から「懲罰」的対応で迎えられる筋合いが、どこにあるのだろうか。
 窮地に立って「調整」の道を探る「協議」を求めたのだから、それは「駄々っ子」の論理には違いない。だが、窮地に立っているのは、このままではどこまでも府下一の高い水道料金を負担し続けてなお赤字の累積を止めることができない15000人町民だとしたら、老幼にかかわらずそれでも「駄々」にあたるのだろうか。
9)協議
 矛盾を克服する手段は多様にあり得るだろう。ここに「協議」の課題がある。府は「不受理・撤回」を本町の申込に対する原則として譲らなかった。府が選択した原則を原因として、現在も続いている「協議入」の果てしない「遅延」を生じた。
 したがって「19年度の協議はすでに困難」とする「時間切れ」の通告は、受け入れられない。協議の時間は十分にあった。それを遅延させたのは、府の選択によるところだった。
 お互いに建設的な矛盾克服に向けた現実的な手段・手法を協議する、本来の意味での「協議」の扉を、早期に開いていただきたい。
 試みに机を叩く作法を真似てみたこともあるが、付け焼き刃では迫力を欠いた。
 落ち着いて、実のある協議を望む。
10)先々のこと
 3水系統合時に問題解消を期するという、水道懇の年次を示しての方針は、その通り履行されるのだろうか。今回の単価引下げの比ではない調整の困難性を、どの程度に織り込んだ上でのスケジュールの約束だろうか。
 むろん予想される到達の効果も、今は明らかでない。
 本町の水道会計の破綻は、20年度以降の協議を、協議だけで通過するわけには行かない。解決より以前に、事業統合という「落ち」では、矛盾の先延ばしを経て住民を霧中に誘うばかり。
 水道懇は表流水を原水とする府営水道事業を担う。地下水とのバランスへの配慮は、経営責任のどのあたりにあるのか、ないのか。
 懇談会の協議の席上「全水府営水利用が事業合理性の視点から至上」とする発言が、一部に強くあったともいうから、席のない小自治体はどこかで外野席なり入手できるのか。
 少なくとも協定で定めた本町の7300㌧は、町民の実需要全てを超える。工業用水どころではない。
 近年の水需要は低い水準で推移し、地下水位は従来に増す趨勢にある。
 乙訓における地下水への世論は、長い経過を経て今日、各自治体水道事業毎に、それなりのバランスで決着した。乙訓地域の水道事業は、もともと地下水の枯渇に備える補完的水源として府営水道の導入に同意した。いつの間にか本末を転倒するわけには行かない。
 ますます「真摯」な議論・協議が重要になる。
 落ち着いた実のある協議を望む。