戦前への回帰を主張 「靖国」派の急先鋒
自民党参院京都選挙区予定候補 西田昌司・前府議
 日本の侵略戦争を「正しい戦争だった」と正当化するだけでなく、戦争当時の国のありようを「美しいもの」と思い込み、 こうした特異な価値観を国民におしつけようとする 「靖国」 派。 いま、この勢力が安倍内閣の中心にすわり、改憲をすすめようとしています。 京都選挙区から立候補を予定している自民党の西田昌司氏 (48) =前府議=は、この「靖国」派そのものの人物です。
西田昌司氏が1999年に出版した「政論―保守の原点を問う」。冒頭でこう強調しています。
 「私は自由民主党の全国青年議員連盟の会長に選任されました。 この会の活動を通じて、 私は日本全国に同じ憂国の志を持つ同志がいることを知り、 大変心強く思いました。 (中略)私の周りでも、『あなたの言うことは確かに道理だが、それは多くの方には受け入れられないだろうなぁ』 ということを言われる方もいらっしゃいます。しかし私は、民主主義は確かに多数決の社会だけれども、その『多数を作る』のは実は多数の人間ではない、むしろ本当に信念や志を持つ少数の人間の献身的な行動が多数を生み出すのだ」。
 では、 西田氏が言う「憂国の志」「信念」とは何か。そして、京都府議時代も含むこれまでの西田氏の言動は…。
 そこには、安倍首相らが参加する「日本会議」の主張とピッタリと一致する危険な思想がハッキリと現れています。
西田氏の言動は、「靖国」派の総本山・「日本会議」そのもの
 今回の選挙で、 西田氏はポスターなど自らの宣伝物のメーンスローガンに 「伝えよう、 美しい精神(こころ)と自然(こくど)」 を掲げています。
西田氏は、従来から「新しい歴史教科書をつくる会」など「靖国」派との深い関係や、 その超タカ派的言動が特徴でしたが、昨年11月11日には「日本会議地方議員連盟」に参加。この組織は、右翼・改憲組織の総本山・「日本会議」(注)と連携し、「誇りある国づくり」のため、「皇室を尊び、 …わが国の国柄(くにがら)に基づいた 『新憲法』 の提唱・制定」「国旗国歌、 日教組・偏向教科書問題」などに取り組むとしています。
 そして、この「靖国」派の野望を端的に示しているのが、「日本会議」のつくった「新憲法大綱案」(以下「大綱案」)。 この内容は、まさに西田氏の「憂国の志」「信念」と軌を一にするものとなっています。
 (注)「日本会議」 1997年に設立され、「憲法改正」、「教育基本法改正」、「靖国公式参拝の定着」、「夫婦別姓法案反対」、「より良い教科書を子供たちに」―侵略戦争と植民地支配、軍国主義美化の「新しい歴史教科書」づくり―などのスローガンをかかげ、「靖国」派の総本山の右翼・改憲組織として活動している。
・皇室は「日本の自立自尊の象徴」
 「憲法・自衛隊・皇室これらはすべて日本の自立自尊を象徴するものであり、特に皇室は日本の文化、 伝統そのものです。それが、占領政策によってどれ程貶められたものになっているか」 (06年1月1日・昌友会機関誌 『ShowYou』 46号)
・「大東亜戦争の大義」「愛国心」教育を 「愛国心を子供に教えることなどは完全にタブーになりました。 東京裁判により、 大東亜戦争の大義が否定されているため、 自分の国の歴史や愛国心まで否定する結果になってしまったのです。 これではまともな教育など出来るはずがありません」 (05年1月1日・昌友会機関誌 『ShowYou』 42号)
侵略戦争肯定、改憲でも
 西田氏が参加する 「日本会議地方議員連盟」 は、 ホームページなどで 「南京大虐殺はヤラセ」「従軍慰安婦に『強制性』はなかった」など、「靖国」史観にたった侵略戦争肯定のキャンペーンを展開しています。
 憲法9条改定についても、「日本会議」がつくった「大綱案」は、全面改定を主張。9条1項の 戦争放棄」については、 海外での武力行使を可能にする「集団的自衛権の行使」が「明確になるような表現に改める」として骨抜きを図ろうとします。
 また、「戦力の不保持」や「交戦権の否認」を定めた9条2項は、「全面的に削除する」とし、「防衛軍の保持」を明記。 国民には 「国家非常事態に際して… 『国防の責務』 を規定する」 としています。 これらは将来の徴兵制や強制的な徴用に道を開こうとするものです。
・「英霊に恥じない生きかたを」
 「先日、 靖国神社に祭られている英霊が家族に残した手紙を見る機会がありました。 もう明日は必ず特攻隊で死んでいくというのに、 死に対する恐れなど微塵も感じさせず、 (中略) 祖国の安寧のために自らの命をかける (中略) 私は嗚咽しながら涙するしかありませんでした」「日本の原点としてあの戦争をもう一度振り返り、『英霊に対して恥ずかしくないのか』ということをもう一度日本人が問い直さなければならない」(01年1月1日・昌友会機関誌 『ShowYou』 26号)
・「憲法改正は当然」 「国民の 『自尊と自立』 を守らなければなりません。 憲法改正は当然のことです」 (参議院選挙に向けた、 西田昌司後援会の 「入会のしおり」)
*日本会議メンバーが安倍内閣の中枢に 
  ○安倍晋三首相
  ○菅義偉総務相
  ○長勢甚遠法務相
  ○麻生太郎外相
  ○尾身幸次財務相
  ○伊吹文明文科相
  ○甘利明経産相
  ○若林正俊環境相
  ○塩崎恭久内閣官房長官
  ○高市早苗沖縄北方担当相
  ○渡辺善美規制改革担当相
  ○谷垣禎一前財務相
「家制度」復活・女性べっ視
 戦前の 「家制度」 復活の主張、 女性べっ視の発言でも同じです。
 「大綱案」 では、「わが国の歴史、伝統、文化に基づく固有の権利・義務観念をふまえた人権条項を再構築」 するとして、「人権制約原理の明確化」を掲げています。 そこでは、 「公共の福祉」 に代えて、「国または公共の安全」、「公の秩序」、「他者の権利および自由の保護」 などを列挙、国家の都合で国民の人権を制約しやすい仕組みにしています。
 一方で、「祖先を敬い、夫婦・親子・兄弟が助け合って幸福な家庭をつくり、これを子孫に継承していくという、わが国古来の美風としての家族の価値」を「国家による保護・支援の対象とすべきこと」としています。
 戦前は、 家長の許可がなければ婚姻もできませんでした。個人の人権・人格を抑圧する仕組みであった「家制度」の復活を狙っているのです。
・女性の社会進出を敵視
「『家』 の思想は個人を、とりわけ女性を縛る封建的な思想としてすべて排除されておりますが、(中略) 今、家庭に必要なものは、家庭の秩序の回復ということであり、 それは日本の伝統的価値観の回復と表裏一体 中略)。個人主義の原理を家庭の中にそのまま持ち込めば、 家庭が崩壊するのは当然の帰結であり、家庭の回復のためには、まさに行き過ぎた個人主義を是正し、戦後50年間封殺されてきた家族主義に代表される伝統的価値観に回帰すること以外にない」(96年6月28日、 府議会)
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「女性の社会進出ばかりがメーンになってくると、家庭を守っている方々の立場というのは一体どうなるのか。(女性の社会進出によって) 家庭が今崩壊してきて、 そのことによって子供たち、どんどんおかしな方向に行っている」(02年、府議会・決算委員会)
(「週刊しんぶん京都民報」2007年6月3日付に掲載)