「現代に伝わる雅楽は、平安時代のものとは別のもの」─京都市左京区の思文閣美術館で開催中の特別展「雅楽の変遷」を主催する上野学園日本音楽史研究所の福島和夫所長が11日、同美術館で講演し、「雅楽は千年不変」との通説を批判しました。
 飛鳥・奈良時代に国家事業として隋・唐から導入された雅楽は、平安時代院政期に隆盛を極め、鎌倉時代も興隆は保持したものの、後鳥羽上皇が鎌倉幕府の倒幕を掲げて挙兵した承久の乱(1221)以後衰退し、南北朝期には「95%が断絶した」と指摘。豊臣秀吉によって復興が着手され、努力は現在まで継続している、と解説しました。
 「血筋、楽器、楽譜、装束、文献は残っていて復興の努力がなされたが、音楽はいったん伝承が途絶えたら検証ができず、まったく同じものの復元は難しい。近世復興の雅楽は、平安・鎌倉時代の『王朝の雅楽』と同じものとは言えない」と結論づけました。
 同展覧会は12月10日まで。