文部科学省に化学物質過敏症の実情を訴える生徒 (「化学物質過敏症の子ども達の幸せを願う会」提供)

 香り付き柔軟剤や洗剤、床ワックス、除草剤などに含まれる化学物質により、強い頭痛や腹痛、吐き気などが生じる化学物質過敏症により、学校での学習が困難となった京都府などの子どもの保護者が昨年12月、文部科学省に要望書を提出し、同27日には、オンラインで同省に実情と改善要望を伝えました。

 要望を行ったのは、京都、大阪、和歌山、愛知4府県の保護者で昨年9月に結成した「化学物質過敏症の子ども達の幸せを願う会」(以下=「願う会」)。

 学校の保健環境整備・改善については、学校保健安全法で国や地方公共団体、学校設置者の責務、学校環境衛生基準を明記し、同基準では、揮発性有機化合物の濃度を定めています。

さらに、文部科学省はマニュアル「健康的な学校環境を維持管理するために—学校における化学物質による健康障害に関する参考資料」なども作成していますが、同省として被害者数などの調査は行っておらず、対策が事実上、教育委員会や学校に任されているのが実情です。

 願う会各会員は、それぞれの学校や教育委員会に対策を求めてきましたが、個別対応では限界があり、国としての対策強化が必要だとして要望を行ったもの。日本共産党の倉林明子参院議員や島田敬子府議が交渉実現に協力し、交渉にも参加しました。

 要望書は、▽学校現場での香りに含まれる化学物質の削減▽床ワックスやせっけんを安全性の高いものに変更する▽義務教育でも、そうでなくても学校に行けるよう一律の対応▽空気清浄機の設置など症状に応じた対応▽生活管理指導表に化学物質過敏症について記載できるようにする▽学校に行けないなどの困難を抱えている子どもに対する相談・サポート窓口の設置-など、19項目にまとめました。

 オンラインでは、小学校から高校までの児童・生徒5人が発言。登校できなくなったり、学校で入れる教室がないため、風雨が強いときも、校内で最も影響が少ない校庭でテストを受けていることや、修学旅行にもいけなかったことなどを涙ながらに報告。「農薬やいいにおいの(柔軟剤など)を(体に)やさしいものに変えてほしい」、「みんなと一緒に勉強したい」、「同じような経験をする人がいなくなってほしい」と訴えました。

保護者「健康被害であり、重篤化させない早期の対策を」

 保護者も化学物質過敏症は、個人の資質によるものではなく、有害な化学物質によって引き起こされる健康被害であることを改めて強調し、重篤化させないよう早期の対策や、継続的な話し合いを求めました。

 府内の保護者は「現状では、子どもたちは救えないと思って要望させてもらった。国に初めて声を届けることが出来たことはよかった。文部科学省とともに厚生労働省などにも、対策を求めていきたい」と語ります。

要望に参加する島田府議