世界遺産・仁和寺(京都市右京区)の門前の大規模ホテル計画をめぐり、同寺のバッファゾーン(緩衝地帯)に住む市民245人が10月1日、ユネスコ世界遺産センターに対して、同計画の建設許可を出さないよう、京都市への勧告することを求める要請書を送付しました。併せてイコモス(国際記念物遺跡会議)にも送付しました。

 市民らは6日、京都市内で会見し、要請書を送付するまでの経緯やその内容について説明しました。2007年の世界遺産委員会が、戦略的目標として「コミュニティ」を追加し、コミュニティの意思を尊重すべきとしているにもかかわらず、京都市当局はその点を軽視していると指摘。市とホテル事業者が、計画について説明した地域住民の範囲は「ごく狭いものでしかない」と訴えました。その上で、周辺住民500人が「せめてバッファゾーン内の全住民の意見を聞いてほしい」との要望書を提出(2020年1月)したものの、聞き入れられなかったことから、ユネスコにホテル計画の調査と建設許可を出さないよう市へ勧告を求める文書を送ったと述べました。

 会見に参加した山根久之助さんは、「計画の説明範囲となった住民の世帯数は約200軒程度だが、バッファゾーンには10倍程度の世帯数があるのではないか。コミュニティの意思が全く無視されている」と訴えました。萩原伊玖子さん(仏国住民環境保全会員)は「日本から本物の文化が失われようとしている」と話しました。