保護者、保育士怒りと悔し涙が

 「市営だから子どもを入れたのに。市はなぜ親の意見を聞いてくれないの」「子どもも親も保育士も、誰も幸せにならないのに」。門川市長の「民間にできることは民間」での号令のもと、順次進められている市営保育所の民営化。保育の質の維持や子どもたちへの影響を懸念し、市営の存続を求めてきた市営保育所の保育士ら。そして、署名集めや市への要請と、奔走してきた保護者たち。取材に対して、保護者や保育士からは、怒りや〝絶望〟にも似た声が聞こえ、悔しさから、その目には涙が光りました。

 もともと、京都市の市営保育所は25カ所、認可保育園約240カ所のうち1割にも満たない数でした。ところが市は、2012年5月に策定した「市営保育所の今後のあり方に関する基本方針」で、その少ない市営保育所を民営化することを決定。今年度までに9カ所が民営化され、市営保育所は現在、15カ所(1カ所は移管先が決まらず分園として存続)。認可保育園全体の6・4%にまで落ち込んでいます。市はさらに2カ所を民営化し、約半数の13カ所に絞り込もうとしています。

 民営化の理由は、市営の「高コスト」を口実にした露骨な財政削減です。「方針」では、定員60人の市営保育所を民営化すれば、年間4000万円が削減できるとしました。しかし、それは公的機関として市営保育所が果たしている役割を無視した方針でした。

 市営保育所の役割の一つが障害児の受け入れです。障害児の割合は18年度、民間の5・2%に対して、市営は19・0%と民間の3・7倍になります。市は、障害児受け入れのために、民間園での職員加配費用を支給していますが、保育士不足のもと、職員確保は難しいのが現実です。市営が、民間での受け入れ困難な障害児の受け皿となってきました。

 「あの時の市営保育所の言葉が、どんなにありがたかったか」。ダウン症の娘、田中美紀ちゃん(3)=仮名=を市営楽只保育所(北区)に通わせている、智子さん(43)=同=は訴えます。当時、ゼロ歳だった娘の入所先を探すため、10カ所以上の民間保育園に当たりましたが、どの園からも断られました。あきらめかけながら、同保育所船岡分園に連絡すると「直ぐに来てもらったらいいですよ」との返事。安堵(ど)しました。

 船岡分園はもとは市営船岡乳児保育所で、民営化の対象となったものの、応募する事業者がなかったことから、市営保育所の分園として存続してきました。「障害を持つ子の行き場を無くさないで」。智子さんの願いです。

虐待児受け入れ安全網の役割も

 市営はさまざまな役割を果たしています。虐待を受けた子どもの受け入れ(民間1・4%に対し、市営が3・3%、14年4月現在)など、困難を抱える子どもたちの〝セーフティネット〟となってきました。この他にも、各保育所に経験豊富な専任担当者(保育士2人)を置いて、子育ての相談や教室を開くなど、在宅で子育てをする世帯を支援します。

 ベテラン職員を配置し、職員の給与や保育の質の面で、保育水準全体を引き上げるモデルともなってきた市営保育所――。それを安上がりのために民営化する。その一番の犠牲となっているのが子どもたちです。

 移管先の事業者や市営、民間双方の保育士の努力などがあるものの、中には、保育士の入れ替えに子どもたちが適応できず、「先生がいない」と泣き出したり、中には円形脱毛症になる子どもも……。民営化の前に、仕方なく転園した保護者たちもいました。

 移管されたある園の保護者は「市は、子どもの異変は、一時的なものとタカをくくっているんでしょ。大人には短い時間でも、子どもの成長にとっては、かけがえのない大事な時間なのに」と訴えます。

青いとり保育園「環境急変、子どもが犠牲に」、引き継ぎなく職員総入れ替えも

 安上がり保育は、民営化だけではありません。市立病院の院内保育所、青いとり保育園で、市は運営委託先について、従前の年間委託額より3000万円も低額を提示した事業者を選定。15年4月には、まともな引継ぎもないまま、職員の総入れ替えを行いました。その時、同園に通っていた当時4歳の娘が突然、おねしょをするようになり、泣き叫ぶようになったと話すのは、同病院の看護師です。「もうこれ以上、子どもを犠牲にしないで」。

 同様に怒りを訴えるのは、崇仁市営保育所(下京区)の保護者(34)です。突然、移転と民営化の計画が発表され、来年4月には、保育所の場所も保育士も変わり、敷地面積も現在の4割に縮小されます。市の身勝手な計画に、他の保護者らと何度も市に足を運びましたが、市の返事は「もう決まったことだから」でした。「いったい、どこが子育て日本一なのか」。悔しさをこらえて言います。「市政を変えるしかないでしょ」

「週刊京都民報」10月27日付より