カキツバタ 京都市北区の深泥池(ミドロガイケ、ミゾロガイケの二通りの読み方がある:面積約9ヘクタール、周囲約1.5キロ)は氷河期の原型の動植物が生息し、戦前の1927年に「深泥池の水生植物群落」として国の天然記念物に指定されている貴重な池(戦後の1988年には稀少な昆虫など動物も含めて「深泥池生物群集」と名称変更)です。
写真は5月中旬から深泥池独特の白っぽい淡紫色の花を付けているカキツバタです。カキツバタはもう見納めで、これからトキソウやイヌノハナヒゲなど夏季の花が咲きます。今は、若芽や若葉など食用として珍重されるジュンサイの葉っぱが水面いっぱいに浮かんでいますが、水中に光が届かないぐらい多量気味で刈り取りの必要もあるようです。
 カキツバタ(アヤメ科アヤメ属:学名Irisu laevigata:和名「杜若」「燕子花」は書付(かきつ)け花[この花の汁を布にこすりつけて染めた]の転訛)は、古来から生息していますが、自生種(本種)は激減し、深泥池をはじめ愛知県、鳥取県などの群生地は天然記念物に指定されています。アヤメとは「いずれ菖蒲か杜若」といわれているようにとてもよく似ており、両方ともアヤメ属で兄弟。同じ兄弟にはヒオウギアヤメ、ノハナショウブやシャガなどもあります。
 深泥池の中央部にある大きな島は浮島で池全体の3分の1を占めています。この浮島は研究調査の結果、約14万年前から存在していたようです。夏季は浮いていますが、冬季になると沈んで冠水するという不思議な島です。動物では貴重な昆虫がいっぱいで、トンボだけでも約60種類、懐かしいゲンゴロウやハナアブなどが生息。植物では高層湿原の北方系の野草で春にはアゼスゲ、ミツガスワ、カキツバタ、トキソウなど、水面にはジュンサイやヒメコウホネなどが生育しています。しかし、動植物の移植や放流なども含めて禁止されているにもかかわらず、ブラックバスやブルーギルなどの外来魚類が放されたり、アメリカミズユキノシタやキショウブなど外来植物が入り込んで深泥池野生態系に悪影響を与えています。同池を守る会の人たちが舟を浮かべてブルーギルや外来種のカメや藻などを採取して保全ボランティアをしていましたが、「悪意はないと思いますが、飼いきれなくて何気なく放されるが、後がどうなるか考えて欲しい」と訴えていました。
 万葉時代から親しまれており詩歌、物語や絵画、美術工芸、焼物などにたくさん登場しています。(仲野良典)
「われのみやかく恋すらむ杜若 丹(ニ)づらふ妹はいかにかあるらむ」よみ人しらず
「緑の高地を帰りながら あちこち濃艶な紫の群落 日に匂ふかきつばたの花彙を 何十となく訪ねて来た」宮沢賢治