明細がなく、「その他支出」に総額のみを記載している「西田昌司後援会」の政治資金収支報告書

上脇氏「事実上の『裏金』のような使われ方した疑いがある」

 自民党の西田昌司参院議員(参院京都選挙区候補)の資金管理団体などが、支出の公開基準が緩く、使途の詳細が確認できない「その他政治団体」に、国会議員候補となった2006年(07年から参院議員)から23年までの18年間で、総額1億円超の資金を寄付してきたことが本紙の調査で分かりました。この政治団体は自身の名前を冠した「後援会」であるにもかかわらず、支出の公開基準の厳しい「国会議員関係政治団体」に届け出られていません。識者は、「制度をよく認識した上で長年寄付を繰り返してきたと考えられ、悪質だ。事実上の『裏金』のような使われ方をした疑いがある」としています。

使途報告厳格な「国会議員関係政治団体」

 寄付を行ってきたのは、いずれも西田氏の「国会議員関係政治団体」(*)である、「一粒会」(西田氏の資金管理団体)と「西田会」、「自民党京都府参院第四選挙区支部」の3団体。寄付を受けたのは、「西田昌司後援会」。寄付額は「一粒会」は7380万円、「西田会」は2960万円、「第四支部」は70万円、合計1億410万円に上ります。

 政治資金規正法は、「国会議員関係政治団体」について、人件費を除く1万円超の支出の使途を報告書に記載するよう義務付けています。「西田昌司後援会」に寄付している、同議員の資金管理団体「一粒会」と、「西田会」はともに国会議員関係政治団体ですが、同後援会は「その他政治団体」に該当し、支出の公開基準が緩く、資金の使途が確認できません。

 「西田昌司後援会」は、2020年~22年の3年間で使途不明の支出が約1750万円以上あると本紙(昨年3月)や『京都』(同)が報道し、問題になっていました。

 本紙は、「西田昌司後援会」の政治資金収支報告書が確認できた6年分(16、17、20~23年)を調査し、使途不明の支出が3828万円に上ることが分かりました。同後援会は「その他政治団体」で、「経常経費」や「政治活動費」の中の「組織活動費」なども明細の明記や、領収書の添付も必要ありません。

 「西田昌司後援会」は18年間の収入総額が1億2690万円で、「一粒会」「西田会」「第四支部」からの寄付が収入の82%を占めます。明細を記入する必要がない「組織活動費」や「事務所費」の支出合計は8909万円に上ります。

住所・電話番号寄付団体と同じ

西田氏「新聞社や上場企業もオープンにしてない」「オープンにすることで自分たちの仕事できなくなる」

 西田昌司後援会と寄付した3団体は、「所在地」や「電話番号」は同じですが、西田氏は同後援会を「国会議員関係政治団体」に指定していません。

 西田氏は昨年3月の使途不明金報道について、自身の動画サイトで「新聞社や上場企業も(領収書などを)オープンにしていない」と強弁し、「オープンにすることで自分たちの仕事ができなくなる」「制度がおかしいというなら変えればいい」と開き直りました。

 政治資金問題に詳しい、上脇博之・神戸学院大学教授は、政党助成金や企業・団体献金、政治資金パーティーなどで得た資金を公開基準の緩い団体へ長年に渡り横流ししているとし、「国会議員である西田氏の政治団体間での資金の移し替えでありながら、支出の詳細が不明なのは問題で、悪質だ。事実上の『裏金』のような使われ方をした疑いがある。この間の政治資金規正法の改正で、『国会議員関係政治団体』から寄付を受けた『その他政治団体』は、同等レベルの公開が義務付けられたが、『1000万円以上の寄付を受けた場合』と条件が付けられた。複数の政治団体に分散して寄付すればいくらでも『裏金』(使途不明金)を作ることができてしまう。寄付金が1000万円未満であっても厳正な使途の公開を義務付けるべき」と話しています。

【国会議員関係政治団体とは】

 *国会議員関係政治団体の定義は、▽国会議員が代表を務めるか、▽所得税の寄付金控除の適用を受け、特定の国会議員を推薦・支持する団体。人件費を除く1万円超の支出を報告書に記載し、全ての領収書の保管義務もあります。1万円以下の支出でも情報開示請求があれば、領収書の写しを公開しなければなりません。しかし、「関係団体」の届け出は任意で、罰則もありません。

 代表者を議員以外にし、寄付金控除の適用を受けなければ、「西田昌司後援会」のように、国会議員の後援会でも届け出をせずに済みます。西田昌司後援会は「その他政治団体」であるため、「経常経費」(事務所費、人件費、光熱水費、備品消耗品費)は総額だけの記載で明細は必要なく、「政治活動費」も5万円以上のみ記載となっています。