【参院選2025】「排外主義」横行許さない 各党が外国人敵視政策競い合い/生活苦の不満、外国人に矛先

参院選(20日投開票)では、「日本人ファースト」や「違法外国人ゼロ」などと喧伝し、管理強化や受け入れの制限など、外国人排除の政策を競い合う状況が生まれています。これら排外主義を唱える政治勢力が横行する状況に対し、識者は「デマをもとに対立と分断をあおる危険な手法」だと警鐘を鳴らすとともに、府民が選挙への差別の持ち込みは許さないと抗議の声を上げています。
選挙の中で外国人差別
「外国人は生活保護が受けやすい」「外国人に医療費がたくさん使われている」「外国人が増えて治安が悪化している」─ネットやSNSを中心に、外国人に対する根拠のないデマがあふれています。参政党の神谷宗幣代表は、3日の第一声で、外国人が増えると「治安が悪くなる」と言い放ちました。
しかし、生活保護利用世帯のうち、外国人世帯の比率は約2・9%(23年度)。国民健康保険の被保険者に占める割合は4%で、医療費は1・39%です(同)。外国人犯罪は、2005年の4万3622件をピークに減少を続けています。23年度にはピークから約3分の1となる1万5541件に減少し、検挙人全体のうち外国人は5・3%でした。
こうした事実を無視し、外国人を敵視する言説が横行するのみならず、複数の政党が参院選公約で迎合あるいは扇動するような政策を掲げる事態となっています。
自民党は「違法外国人ゼロ」と明記。6月にまとめた政策提言では、健康保険や生活保護など「制度の適正利用」や、土地取得・利用の管理強化などを掲げています。
参政党「生活保護停止」を政策に
参政党は「日本人ファースト」をスローガンに、「行き過ぎた外国人受け入れに反対」と明記。管理型外国人政策への転換を図るとし、受け入れの制限、永住権取得や帰化にあたって、日本への忠誠心を確認することなどを掲げています。
また、医療保険や生活保護の乱用を防ぐなどと主張し、土地取得には厳格な制限を設けるとしています。政策集には、「生活保護支給を停止」と明記しています。
国民民主党は公約に「外国人に対する過度な優遇の見直し」と記載していましたが、排外主義的という批判を受けて削除しました。
日本維新の会は、外国人の受け入れを制限し、日本経済の成長に資する人材に限って受け入れるとしています。外国人住民の比率の上昇抑制や受け入れの総量を規制すると記載。医療保険や運転免許などの制度を一部外国人が乱用しているなどとし、制度の厳格化を打ち出しています。
外国資本による土地取得を巡っては、自衛隊基地・在日米軍基地の周辺の住民を監視できるようにする土地利用規制法(21年6月公布)の制定にあたり、政府が、基地周辺の土地取得の増加による安全保障上の脅威を主張しました。しかし、具体的に脅威となっている事例は示すことができませんでした。

「排斥」と「分断」が際限なく広がる
こうした排外主義の主張について、ヘイトスピーチとヘイトクライムの訴訟に関わってきた豊福誠二弁護士(にしき法律事務所=京都市中京区)は、「恐怖と分断をあおって、外国人を社会、政治への不満のはけ口とする手法です。外国人に矛先が向けられているのは、国内では少数派であり参政権もない、ようするにたたきやすいからです。たたく理由はデマでも何でも良くて、『たたく』こと自体で支持を集めようというものです」と指摘します。
こうした主張を放置すれば、次々と新たな「敵」がつくりだされ、際限なく排斥と分断が広がることになると指摘し、「特に参政党の主張は『無茶苦茶だから』と相手にせず、一蹴してしまう気持ちも分かります。しかし、こうした言論への国民の支持を広げないため、警鐘を鳴らし続けなければいけません」と訴えます。
ヘイトで感覚まひと同じ状況
排外主義の政策を各党が競い合う状況となっていることについて、「ヘイトスピーチの害悪と同様で、声高に叫ばれる状況を許すことで、周りの感覚がまひしてさらに広がってしまう。まさにそれが起きています。だからこそ排外主義は許されない、だめなんだと言い続けなければなりません」と強調します。
こうした排外主義が一部の国民に浸透する背景には、賃金が上がらないなど経済の停滞によるひっ迫した国民生活があります。この状況をもたらしたのは、大企業中心とアメリカ言いなりの政治が続いてきたからです。自公政権は、大企業の優遇税制を続け、教育や福祉の予算を削るとともに、米国の求めに応じた大軍拡で暮らしの予算を圧迫してきました。
参院選で外国人政策を掲げている政党は、こうした国民の困難の大本にある、大企業優遇、アメリカいいなりの政治を正すという方針は持っていません。

真の問題を正してこそ
日本共産党の堀川あきこ衆院議員は、「京都では朝鮮学校の襲撃やウトロ放火事件など、人種差別と排外主義に対し、声を上げて闘ってきた市民の運動がある。共産党もともに連帯して闘ってきた歴史があり、排外主義は許さないという市民との連帯を大いに広げて立ち向かっていきたい。そして、生活の困難の原因は、自民党政治にあり、参院選ではそれを変えられるチャンスだと訴えていきたい」と語ります。
6日に、三条河原町など京都市内5カ所で、日本共産党の学生後援会と民青同盟が主催した宣伝では、「STOP! 外国人敵視」というプラスターが掲げられました。市民の反撃が始まっています。