結成総会であいさつする荒田会長。前列の右端は中山市長(5月11日、京丹後市)

結成総会 中山市長「できる限りサポートしたい」

 旧海軍の峰山飛行場(京丹後市)の遺構や歴史を後世に引き継ごうと、地元住民らが5月11日、「海軍峰山飛行場の遺産の保存を求め活用する会」を結成しました。同日、同市大宮町の河辺区民センターで結成総会を開き、市民ら約30人が参加。役員体制を決め、活動方針などを採択しました。

 同飛行場は、同市峰山町と同大宮町にかけて整備され、南北約1㌔東西約500㍍の敷地に、長さ約1・5㌔の滑走路を有していました。通称「赤とんぼ」と呼ばれる練習機を用いた訓練や、特攻隊員の養成が行われ、最大3000人の人員がいたとされています。

弾薬庫や格納庫など戦跡が現存

 飛行場跡は現在、住宅や農地となっていますが、「弾薬庫」や「格納庫」など数個の戦争遺跡が現存しています。これら遺跡や記憶の継承を目的に昨年6月、飛行場跡地の周辺住民が「『海軍峰山飛行場の遺産や関連するものを保存し活用する会』の結成準備会」をつくり、現地の見学会を開催するなど取り組みを続けてきました。

 結成総会で、同準備会メンバーで同会会長に就任した荒田保次さんは、世界では現に戦争が行われるもと、日本の安全保障の在り方を巡り様々な意見があるとした上で、「(遺産の保存・活用を通じ)まずは過去の戦争の実態、実相を周りの人に伝えていかないといけないと思った。学びながら平和に生かしていきたい」と述べました。

 同市の中山泰市長が来賓あいさつ。ロシアや中東で戦争が続く中、戦後80年を迎えたもとで、「戦争の記憶を語り継ぐ重要性が高まっている。平和の意義を再確認し、貴重な戦跡を承継していくことは大切だ」と強調。遺産の保存・活用に向け、「行政としてもできる限りサポートしていきたい」と語りました。

 東京大学生産技術研究所の腰原幹雄教授がメッセージを寄せ、同飛行場の格納庫は「新興木構造」と呼ばれる大型建築物の代表的なもので、格納庫としては旧海軍・鶉野飛行場(兵庫県加西市)から同県姫路市に移築されたものと合わせて二つしか現存していないとし、「木造技術史を建物として残す貴重なもの」と保存・活用への期待を語りました。

遺構の保存・活用の検討へ

 活動方針として、遺構の調査・発掘活動や見学会の開催に引き続き取り組むとともに、中長期的には遺構の保存・活用へ向けて所有者とも相談しながら検討を重ねていくとしました。

 結成総会を終えて、野村和之副会長は、「多くの方に参加いただき、市長も含めて保存の必要性を共通の思いとして確認でき、ありがたくて心強かった」と話していました。

準備会として昨年11月に行った遺構の見学会で、現存する弾薬庫を参加者に案内する荒田さん