「人権侵害の立法許されるのはおかしい」 結婚したままの性別変更の申し立て認めず 京都家裁
結婚後、自認する性である女性として社会生活を送る、京都市のトランスジェンダー女性が、性別の法的取り扱いを生活実態と一致するよう、戸籍上の性別変更(男性から女性)を申し立てた家事審判で、京都家庭裁判所は3月19日、変更を認めない不当決定を出しました。これを受けて同26日、申し立て人の、みきさん(仮名)と弁護団が京都市内で会見を開き、大阪高等裁判所に抗告する意向を表明しました。
法令上の性別変更を認める「性同一性障害特例法」(特例法)には、未成年の子どもがいない、結婚していない(非婚要件)などの要件があります。「非婚要件」は、同性婚状態が生じるのを防ぐために設けられた規定です。
既婚者の場合、性別を変更するために離婚するか、婚姻を維持するなら自認する性別への変更を諦めるか、“過酷な二者択一”を迫られる状況があります。みきさんは、性自認が尊重される権利(憲法13条)、婚姻を維持する自由(同24条)の侵害だと訴え、法律上「ふうふ」のまま、変更を認めるよう求めています。
家裁は、生活実態と法的性別取り扱いの不一致による社会生活上の困難や精神的苦痛などの事実を認定し、婚姻関係の維持も憲法上保障された人権として認める余地はあるとしたものの、「直ちに憲法13条、24条に反して無効となると解することはできない」と判断。同性カップルが婚姻できない現制度を前提に「まずは立法府において議論されなければならない」と申し立てを却下しました。
「司法の役割放棄」「『非婚要件』無視しないで」
代理人の水谷陽子弁護士は、「立法府の裁量を無制限であるかのように判断したのは問題。立法により生じた人権侵害を是正するのが司法なのに、それを放棄した」と指摘しました。
みきさんは、「立法は憲法に従うべきで、人権を侵害する立法が許されるのはおかしい。高裁で判断を求めたい」と話しました。
また、会見では、特例法について、生殖機能がないなど手術を伴う2要件で最高裁が「違憲」、高裁が「違憲の疑い」と判断したことを受け、法改正を検討中。法律上同性のカップルが結婚できない現婚姻制度を巡っては、「違憲」との司法判断が相次ぎ、法制化が急がれる情勢の変化も話題になりました。
みきさんは、婚姻の継続をうたう憲法24条と特例法の「非婚要件」で国に離婚を迫られることの矛盾を主張。立法府に対し、「『非婚要件』については注視すらされていない。無視しないでほしい」と訴えました。