生活費、貯金削って医療費捻出も■負担重い8割超、「受診ためらう」も多数

 京都民主医療機関連合会(京都民医連)はこのほど、75歳以上対象の後期高齢者医療制度で、患者の2割負担が導入(22年10月)されたことの影響について、アンケート調査の結果をまとめました。1割から2割への倍加によって、「今まで通り受診」と回答した人が78%にとどまり、何らの出費を削って医療費を捻出せざるを得ない実態が浮かび上がりました。

 この「75歳以上医療費窓口負担2割化実施後アンケート調査」は、全日本民医連の全国調査の京都の結果を集約したものです。昨年12月~今年1月、府内の民医連の病院・診療所に通院する75歳以上の患者に協力を依頼し、1219人が回答。1割から2割負担になった628人のまとめです。

 設問は、▽2割になっての負担感▽受診動向の変化▽3年間の「激変緩和措置」の対応▽3年後の受診動向予想。

 負担感は、「とても重い」(29%)と「重い」(54%)を合わせて83%。実施前の62%から20㌽増加しています。

 2割化による受診動向の変化について(複数回答可)は、「今まで通り受診」が492人(78%)で、「受診をためらうようになった」も106人。「このままでは受診できなくなる」との回答も15人ありました。「今まで通り受診」と回答した人も光熱費や交際費、食費などを削る、預金を切り崩すなど、何かの出費を削って医療費に回すとしており、生活に余裕のない状態が表われています。

 医療の窓口負担割合の引き上げに伴う「激変緩和措置」(*)については、「手続きを済ませた」は28・8%、「手続きをしていない」が50%。手続きが「わからない」との回答が手続きをしていない人の半数を占めました。

 3年後を予想して「受診できると思う」と答えた(複数回答可)人は、56%でした。

 調査をまとめた「まちづくり政策部」では、2割になった受け止めの負担感は大幅に増えており、「2割化は、2倍化」だと指摘しています。約8割が、今まで通り受診すると回答している点でも、命に直結する医療費は削れず、ほかの何らかの出費を削らざるを得ない状況がわかると分析。「高齢者のいのち、健康・人権を脅かす『75歳以上医療費窓口負担2割化』の中止を求める」としています。

 75歳以上の高齢者に対して、政府はさらに、医療保険料を引き上げる健康保険法等の改定法を提案。自民、公明、国民の賛成で5月12日、可決・成立しました(24年度から実施)。改定法は、後期高齢者の保険料の引き上げ、「出産育児一時金」の財源の一部に後期高齢者医療制度から負担する仕組を新たに導入するもの。日本共産党は、「全世代型社会保障」の名のもとに、「全世代の国民に負担増を押し付け、国の責任を後退させるものだ」と批判し、反対しました。

 (*)施行後3年間(2025年9月30日まで)は、2割負担になる人に、1カ月の外来診療の窓口負担の増加額を3000円までに抑える(入院の医療費は対象外)もの。「高額療養費」として、事前に登録すると、同一の医療機関での受診で、上限額以上を窓口で支払う必要はなし。複数の医療機関の場合は、合算して3000円を超えた分を後日、払い戻す申請が必要。

【自由記入欄に寄せられた声】

  • 2割負担はきつい。1割負担の時と年収は変わらないのに
  • 糖尿病の薬は減らせないが、その他については減らしたい。激変緩和措置はいずれなくなる。ごまかしより2割中止を
  • 今81歳で、何とか警備の仕事をやっていますが、いつ辞めることになるか不安。医療費はもちろん、生活自体が心配
  • 病院に行くのが楽しみな人は誰もいません。元気でいたいからこそ病院へ行くのですから絶対に値上げは許せません
  • 〝高齢者は死ね〟と言われているような政治はおかしい。今まで頑張って働いた者に心ある政治を求める
  • これから高齢者数が増えることを思うと社会保障制度の改革は必要。83歳の私にできることが少なくなって(体力的に)いるのでくやしい