小栗崇資さん

賃金上がらず経済悪循環の元凶に

非正規置き換え・法人税減税・金融投資偏重で過剰なため込みに

 京都府内上場企業の2022年度決算で内部留保の上位10社の合計額が10兆8134億円に上っていることが分かりました。大企業がため込んだ内部留保について、小栗崇資・駒澤大学名誉教授に聞きました。

──なぜ大企業の内部留保が膨れ上がったのでしょうか

 大企業を中心に、2000年以降、莫大な内部留保の積み上げが続いています。

 財務省の法人企業統計によると、全企業の売上高は、95年度に、統計開始以降最高の1485兆円となりました。その後、05年度から08年度と、17・18年度は1500兆円台へと微増しましたが、その他の期間の売上高は1400兆円台を前後しており、売上高は25年近く上がっていません。

 21年度の売上高は1448兆円にとどまっています。しかし、経常利益は95年度の26兆円から、21年度は84兆円へと3・2倍に伸びています。

 売り上げは伸びず低迷したのに、利益が増えた要因の一つは、人件費の切り下げです。雇用を派遣などの非正規雇用に置き換えることで、一人あたりの平均賃金も95年の388万円から21年の378万円へ下がっています。

 2つ目の要因は法人税の減税です。法人税率は97年まで37・5%でしたが、段階的に引き下げられ、現在は23・2%。法人税減税と抱き合わせで国民へは消費税増税が行われています。

 3つ目の要因は本業ではなく、金融投資などを増やしたことからの金融収益の増加です。

 そうした利益を積み上げ、膨れ上がったのが内部留保です。90年代までは、内部留保を将来の設備投資に回し、雇用を生んできました。

しかし、21世紀以降は人件費削減や法人税減税で得た利益を金融投資や子会社投資に回し、株主配当や自社株買いに利益を還元している状況です。内部留保が、雇用や市場拡大につながらず、経済の悪循環が続いています。

──円安で中小企業と大企業でどのような影響が出ていますか

 円安による物価高騰によって、中小企業は、原材料の調達価格の高騰、エネルギーコストの上昇などで大打撃を受けています。原価が上昇すれば価格転嫁が必要ですが、実際に価格転嫁できた企業はほとんどありません。中小企業家同友会の調査(昨年11月発表)で、価格上昇分の全てを価格転嫁することができた企業は5%程度で、価格転嫁の達成率が3割未満の企業は約63%にのぼっています。

 一方で輸出大企業は、円安差益によって儲けを上げています。野村證券の調査では、1円の円安ドル高で自動車や機械などで経常利益は0・3%上振れするとし、上場企業の合計では1円で2000億円の差益が出るとしています。

 アベノミクスが進めた円安政策によって、大企業が儲けを上げ、中小企業が打撃を受ける構図が続いています。

──どうすれば日本の経済と暮らしを立て直せますか

 大企業が溜め込んだ内部留保を社会的に活用する必要があります。

 考えられるのは内部留保への課税です。海外では、台湾や韓国などで実施され、毎期の内部留保の増加分に課税されます。

 台湾では98年から全法人に対して10%の課税がされてきました(現在は5%)。韓国では自己資本500億㌆(約45億円)以上の約4000社に対して課税され、設備投資や賃上げに活用した場合は控除されます。

 日本でも大企業に対し、雇用拡大や賃金引き上げ分を非課税にした上で、内部留保課税を行うべきです。新たに生まれた税収を賃上げなど、中小企業支援の財源に回すべきです。

■日本共産党の内部留保課税案

年2%、5年で10兆円の財源 中小企業賃上げの支援に

 日本共産党は昨年11月に発表した「物価高騰から暮らしと経済を立て直す緊急提案」で、アベノミクスで増えた大企業の内部留保に5年間の時限的課税を行い、10兆円の財源をつくり、中小企業の賃上げ支援を行うとしています。

 これは、資本金10億円以上の大企業が、2012年以降に増やした内部留保額に対して、毎年2%、5年間で合計10%の時限的課税をします。この10兆円で中小企業・小規模企業の賃上げへの直接支援を行います。

 内部留保の課税対象額から、賃上げ分や「グリーン投資」額を控除して、大企業の賃上げや気候危機打開に向けた「グリーン投資」を促進するとしています。