憲法研究所の創設60周年を記念した講演会が10月29日、京都市下京区のキャンパスプラザで行われ、研究者や弁護士、市民ら80人が参加。同志社大学の岡野八代教授、大阪経済法科大学の澤野義一特任教授が講演しました。

 同研究所代表委員の上田勝美・龍谷大学名誉教授があいさつ。同研究所は安保闘争の最中、1962年に田畑忍同志社大学教授(元同大学学長)が呼びかけて、憲法理論を総合的に研究する必要性から活動を開始し、専門書の発刊、大学講座の開設、ニュース発行で社会的貢献を続けてきたと紹介。「平和憲法を世界に広げ、地上から戦争をなくすことが田畑先生の考えです。皆さんと平和憲法百年の計を目指したい」と呼びかけました。

 岡野氏は現在、大阪高裁で控訴審をたたかっているフェミ科研費裁判について、自民党・杉田水脈(みお)衆院議員が「慰安婦」問題の研究を「ねつ造」、研究費を「不正使用」と誹謗(ひぼう)中傷を繰り返したことから提訴に至った経過を発言。杉田氏の「生産性がない事に税金を使うのはけしからん」という発言は、「憲法13条の個人の尊重に反する。国家を個人よりも重く見ることは立憲主義の前提としてありえない」と厳しく批判しました。

 自民党の改憲草案で個人が「人」に変えられ、家族の絆や助け合い、家族の一体感などが強調されているのは、軍事増強で「戦争する国」づくりに向けて、性別役割を強化し、賃金の男女格差やケアに携わる人の冷遇を省みない政治と一体だと強調。「だれかを犠牲にする国は、だれもが犠牲になるかもしれない。最も大切にすべきは個人の人権」と述べました。

 澤野氏は、安倍政権以来の改憲策動の動きや岸田政権が進められる軍拡の背景に、統一協会や日本会議と共通した改憲論があり、ジェンダー平等や同性婚を否定する根拠づけとしていると指摘しました。また、ロシアによるウクライナ侵略で「9条では国を守れない」との主張について、東欧での歴史的な国境紛争やウクライナのNATO加盟など緊張関係を生み出してきた背景があり「軍事大国化でなく、戦争にしない教訓をどう導きだすかを考えるべきで、9条が無意味論には当たらない」と述べ、コスタリカが1983年に非武装永世中立をうたい、平和外交を進め、世界の核廃絶運動の推進力を担った重要性を紹介しました。