菅首相による日本学術会議会員の任命問題拒否など、学問の自由を侵害する動きが強まるなか、「日本の学術と大学の危機をどう打開するか」をテーマした「京都の市民と大学人のつどい」が8月2日、京都市南区の龍谷大学校友会館「響都ホール」を会場に、オンラインも併用して開かれました。

 主催は、京都大学職員組合、京都府公立大学法人労働組合、京滋地区私立大学教職員組合連合、自由と平和のための大学有志の会、日本科学者会議京都支部が参加する実行委員会。

 細川孝・龍谷大学教授が、学術会議の任命拒否問題や、大学の自治、学問の自由を脅かす国立大学法人法の問題を市民とともの考えていこうと企画の趣旨を説明。

 駒込武・京都大学大学院教授が「国立大学のガバナンス(=運営)改革と大学危機」、光本滋・北海道大学大学院准教授が「コロナ・パンデミックが問う大学の姿」と題して講演しました。

 駒込氏は、思想を処罰する体制の構築という点で学術会議への人事介入と京大滝川事件との共通点を分析。

 さらに、今年5月に行われた国立大学法人化法「改正」で、学長を選ぶ「学長選考会議」に学長の職務執行を監視する権限を付与し「学長選考・監察会議」に変更するとしていますが、委員を学長が選ぶため、透明性と公平性が担保できるか疑問視。常勤の監事を置くことを求めていますが、文部科学大臣の任命によるもので、文科官僚の天下りの可能性も否定されていないことから、「国立大学に対する国による間接支配が強化される恐れがある」と指摘しました。

 光本氏は、コロナ禍のもとで起こった学生による学費減額を求める要求・署名運動において、経済的要求とともに、大学の意味の問い直しや学生の要求・権利に関する認識が深まったことを重視。「大学における意思決定から排除されている学生の権利の確立が課題」と指摘。

 政府の意向に沿うものではなく学生・市民のための大学を目指すべきだとし、この大学像実現のために、自主的、主体的な「大学評価を可能にする構成員の共同をつくることが、大学自治の課題だ」と強調しました。

 日本学術会議会員の任命を拒否された、芦名定道・関西学院大学教授(前・京都大学大学院教授)と松宮孝明・立命館大学教授のメッセージや、長谷川豊・京都府立大学准教授のアリーナ開発をめぐる文書発言も配布されました。