中村和雄さん

 コロナ禍のもとで、主に非正規労働者から、解雇や賃金未払い、休業手当が支給されないなどの相談が各地で殺到しています。

 私が共同代表をつとめている「非正規労働者の権利実現全国会議」が実施したアンケートには600人以上から回答があり、「自宅待機にさせられたけれど賃金は支払われない」、「社員の休業補償は8割だけど、派遣は6割」、「正社員は在宅勤務なのに、派遣は毎日出勤」などの悲痛な声が寄せられています。

 こうしたもとで政府は休業補償などの支援制度を創設していますが、多くの人が利用できていません。

 労働者の雇用を維持した場合に、休業手当を助成する雇用調整助成金について、コロナ特例で1日の限度額が8330円から1万5000円に引き上げられ、中小企業への助成率も最大9割から10割助成へ引き上げるなど大幅に拡充されています。この制度を使えば、多くの中小企業で従業員を解雇・雇い止めをせずに済むのですが、制度申請が複雑なこともあって利用が進んでいません。

補償なし約半数、制度周知徹底を

 また雇用調整助成金は会社側が申請しなければいけませんが、労働者自身が申請できる「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」という制度もあります。雇用保険に入っていないアルバイトなど非正規労働者も対象で、1日あたり8割の補償が受けられます。

 就職情報企業が6月に2200人から調査した結果、何らかの補償を受けていない人は56%にのぼりました。雇用調整助成金も休業支援金制度も利用が進んでいません。府や京都労働局など行政は積極的に周知し、制度利用をうながすことに全力をあげるべきです。

 京都経済の特徴としてインバウンド(訪日外国人観光客)などの観光業も多く、非正規労働者の割合が全国トップクラスで、コロナ禍で大打撃を受けています。府や京都市はインバウンド重視の経済政策から、ものづくり産業はじめ地元経済活性化のための中小企業振興を重視する政策に転換すべきです。

県独自に最賃引き上げ支援

 地域経済を活性化させるには最低賃金の引き上げが必要です。しかし、中央最低賃金審議会は今年度の最低賃金について、現行水準の「維持」を適当とし、京都地方最低賃金審議会は7日、最低賃金を昨年同額の909円に据え置きました。コロナ禍でこそ、労働者の賃上げや経済活性化のために最賃引き上げが必要です。

 中央審が引き上げ目安を示しませんでしたが、40県が最賃を引き上げました。山形県では最賃を引き上げた企業に支援金を支給する制度ができるなど、引き上げを推進している自治体もあります。また下請け業者にも時給1000円以上などの最低賃金額を示す公契約条例の制定などを行えば、賃上げとなり、地域経済を活性化させることができます。

 自民党の最低賃金一元化推進議員連盟(会長・衛藤征士郎衆院議員)は6月にコロナ禍でも最賃を引き上げるべきとした緊急提言を確認しました。そこでは中小企業支援策の財源として内部留保課税の検討も示唆するなど、与党内でも変化が起こっています。

 コロナ禍で、日本の不安定な労働の問題点が浮き彫りになりました。これを機に、非正規雇用から正規雇用へ転換することや、最賃引き上げ、週40時間働けば誰もが安心して暮らせる京都へ変えていくことが求められています。