京都こども文化会館(京都市上京区)

 府と京都市は5月14日、共同で管理運営してきた京都市上京区の京都こども文化会館(愛称・エンゼルハウス)を老朽化を理由に11月末までに閉館すると発表しました。同会館の発展・存続を求めてきた市民団体からは抗議声明が出され、日本共産党府議団は撤回と存続を求めて申し入れました。

 同会館は子どもが文化・芸術に触れ、発表する場として1982年に開館。音楽会やバレエの発表会、子ども向けの芸術・文化教室などで親しまれてきました。

 閉館理由は建物の老朽化で、地震で倒壊する恐れがあることや、漏電の危険性、空調設備の腐食、屋根の劣化などをあげ、建て替えは約21億円、大規模改修は約10億円かかるとしています。

 存続を求める市民の声を無視して、18年に有識者らでつくる懇談会は「多額の税金をかけ、大規模改修や建て替えをすることに多くの府民、市民の理解を得るのは難しいと言わざるを得ない」と意見していました。

 府の健康福祉部こども・青少年総合対策室によると、同会館は、府と京都市が出資する「一般財団法人京都こども文化会館」が運営しており、閉館にあたり議会の承認は必要ないとし、「府と京都市で検討して決めたもの」としています。

 同懇談会が16年12月に設置されたことを受け、会館を利用する市民や文化団体が「京都子ども文化会館を守り☆よくする会。」を17年7月に結成。同会は、会館が府内で唯一「こども」の名称がつく施設で、子どもの文化・芸術へ大きな役割を果たしてきたことを紹介しながら、要望署名を4000人以上集め、議会への陳情も行ってきました。

 同会は15日、決定に抗議する「声明」を発表。「税金投入に理解が得られない」と閉館を求めた懇談会の意見について、「子どもも大人も、良い文化に触れ、豊かな人間育っていくために税金をかけることが悪いことですか」と批判。「どう考えても十分な議論がされてきたとは思えない」とし、抗議しています。

 同会の木戸史代表は、「コロナ感染拡大の影響で文化イベントの大半が中止になっている時期になぜ閉館を決めるのか。存続を求める市民や子どもたちの声をきちんと聞いてほしい」と話しています。

 日本共産党府議団は15日、西脇隆俊府知事に対し、抗議と存続を求めて申し入れました。同会館の老朽化に対して設備の更新や抜本的な改修をしてこなかった府と京都市の責任が問われていると指摘しています。

 またコロナ禍の中、「文化芸術の灯を消すな」と運動と世論が広がる中、閉館を発表することは問題だとし、「いま自治体が取り組むべきことは文化や芸術を支え、充実できるよう注力すべき」と強調。閉館方針の撤回と存続に向けて子どもを含む利用者や住民の声を聞き、改修や建て替えを行うよう求めています。

府へ申し入れる(右から)成宮真理子、西脇郁子両府議