子育て真っ最中のママたちに支援拡充の願いを聞く(右から)日本共産党の成宮まり子府議、河合よう子京都市議(西京区)

 「子育て・教育環境日本一」を重点施策の1つに掲げる京都市。9月から「子ども医療費支給制度」の改定で、3歳以上の通院医療費(中学生まで)の自己負担額の上限が月3000円から月1500円に引き下げられました。門川市長は〝実績〟と浮かれますが、京都府の制度に〝乗っかった〟だけ。まちなかで、若い母親たちに尋ねると、「〝子育て環境日本一〟で、この水準ですか?」「中学校卒業まで、一部負担金(200円)だけで診てほしい」──驚きの声と他都市並の医療支援の拡充への願いが寄せられます。

 それもそのはず、京都市で通院無料(一部負担金200円)は2歳まで。この無料の対象年齢は20年間変わっていません。府内26自治体のうち21自治体では、京都府の制度に独自に上乗せし、すでに中学校卒業まで窓口負担はほぼ無料になっています。全国の政令市でも、名古屋市、さいたま市は中学校卒業まで無料です。

3歳になると「行きにくく」

 京都市中京区の公園。3年前に東京から引っ越してきて、6歳と3歳の子どもを育てている母親(40)=中京区=は、「東京は中学生まで無料(一部負担あり)だった。月上限1500円で子ども2人が医者にかかると負担感がある」と話しました。

 ほかにも、1歳9カ月の子どもを育てながら在宅で仕事をする女性(35)は、「6歳くらいまでは自分で体の症状を伝えるのは難しい。気軽に医者に行けるとありがたい」、5歳と2歳の子どもの母親(31)は、「保湿薬が必要でも3歳になって皮膚科に行きにくくなった。姉の住む宇治市と比べても京都市の支援は低い」などの声が返ってきました。

 京都市内の小児科医にも、「さらなる軽減が必要」という認識が広がっています。

小児科医アンケートも「中学生まで」

 京都市の支給制度の拡充が19年度予算で発表されたことを受けて、京都府保険医協会が、拡充の受け止めについて小児科医に尋ねたアンケートの結果を「京都保険医新聞」(7月25日付)で掲載しています。

 回答した74人(回答率26%)のうち、「さらなる軽減が必要」は70%、「十分だと思う」は18%でした。軽減のレベルについても、2歳までと同じ月200円負担で済む年齢を「段階的にでも中学生まで」が48%、「少なくとも就学前」が44%と答え、保護者の願いとほぼ一致する結果です。

 同アンケートには、3歳になったとたんに受診しなくなる、兄弟4人ともぜんそくで経済的負担が大きいという訴えがあったという事例報告も寄せられています。

 高校生を頭に6人の子どもを育てる母親(45)=伏見区=は、3歳を過ぎて集団生活の規模が大きくなると感染する機会が増えることや、進学に伴う学校健診で心電図、聴力など再検査を要する体の変化が見つかると言います。「上限1500円に減ったのはありがたいけれど、経済的負担で受診を控えることのないよう医療制度の支援を拡充してほしい」と願います。

 3歳以上の自己負担額が1500円に軽減された背景の1つに、府市民が、「通院月3000円負担は重すぎる」という声を届けてきた運動があります。

 京都府保険医協会、新婦人京都府本部、京都民医連など6団体が事務を務める、「子ども医療費無料制度を国と自治体に求める京都ネットワーク」(略称=子ども医療京都ネット)が運動を17年に再開し、翌18年に府・市それぞれに、4000人分を超える署名を提出。子育て中の保護者アンケート(1218人回答)でも、94%が「3000円負担の無料化」を希望していました。

 同ネットでは、特に手厚い助成が必要な就学前で1500円の自己負担を課すのは近畿の府県で最も高いことを指摘し、「中学生まで無料。せめて就学前までは早急に無料(一部負担金200円)」にするよう京都市に求める意向です。

 子どもの医療費助成制度は、国の制度化が進まないなかで全自治体が実施。厚生労働省が8月に発表した18年度調査では、高校卒業まで助成している市区町村は、通院と入院ともに全体の3割を超えました。「中学校卒業まで」と合わせると、通院も入院も約9割(通院は88・9%を占める1548市区町村)に達しています。

■本来無償であるべきもの/佛教大学社会福祉学部教授・武内一さん

 病気の治療や健康回復のために、お金の心配なく医療、保健サービスを利用することを子どもの権利としてとらえれば、子どもの医療費は本来、無償であるべきだと思います。国がその措置をとらないもとでは、自治体に実施の輪を広げる役割があります。

「貧困なくす」支援を争点に

 京都市のような大都市では、大変豊かな暮らしの一方で、多くの子育て家庭がやりくりに苦労しています。その子どもたちを守ることは、誰一人置き去りにしない施策として重要です。

 国連サミットで決められたSDGs(エスディージーズ=持続可能な開発目標)で、国際社会が目指す17の目標の第1番目が「貧困をなくす」ことです。そのための行動の支援が、国、地域レベルの具体的政策に求められ、京都市の「京プラン」の基本方針にも取り込まれています。  「子育て環境日本一」にふさわしく、貧困をなくすための子育て支援を市長選の大きなテーマにすることは大事だと思います。すべての人々が平等に医療機関にかかれるよう、その条件や仕組みを作ることは自治体でも工夫次第でできると思います

(「週刊京都民報」10月13日付より)