社保協シンポ

 厚労省が府内4病院を含む全国424の公立・公的病院の再編・統合を検討している問題で11月4日、京都市中京区で緊急シンポジウム「京都の医療はどうなるの?」と題して、研究者や医師らが報告しました。

 4病院は、市立福知山市民病院大江分院、舞鶴赤十字病院、国保京丹波町病院、独立行政法人国立病院機構宇多野病院。

 横山壽一佛教大学教授が「国の進める地域医療の姿とは」と題して講演。厚労省が医療費抑制のために病床を削減する地域医療構想や医師数の抑制、国保の都道府県化などを仕掛けてきており、新たな局面として、病床削減の突破口として公立・公的病院の改革が出されたと指摘。「地域の実情を無視したものだ。中小の病院が狙い撃ちされており、このままでは地域医療が崩壊する。厚労副大臣がお詫び行脚に回っているが、撤廃させなければならない」と厳しく批判しました。

横山壽一氏
横山氏

 京都医労連の塩見正書記次長は、再編・統合の対象とされた病院の選び方が機械的で病院名まで一方的に公表するのは乱暴だと指摘。診療実績の基準が恣意的に操作されている可能性や「データに基づく」と言いながら公表していない問題点を述べ、「今後も国と地方のせめぎ合いが続く。地域から声を上げていく運動が後押しになる」と話しました。

 京都民医連中央病院の吉中丈志名誉院長は、厚労省が医師確保や外来医療計画の策定は地方に丸投げしておきながら、医師数と病床数については厳しく規制したり、府内の入院医療にかかわる医師少数区域はないなど、実情を無視したデータで再編・統合が判断されている問題点を指摘しました。

 京都府保険医協会の中村暁事務局次長は、国から独立した機関として専門医認定を行う「一般社団法人日本専門医機構」が14年に発足したものの、昨年の医療法改正で厚労省に意見を聞くことが義務づけられ、医師数のコントロール手段に利用される可能性を指摘。世界医師会が09年に採択した「マドリッド宣言」で「高度な専門性と臨床上の独立性を持ち、外部からの干渉を受けない」とうたわれていると紹介。医療費削減を最優先する国の政策を批判しました。

 全国医師ユニオンの植山直人代表は、厚労省の調査で病院勤務医の4割が過労死ラインを超え、1割が過労死ラインの2倍の1904時間を超えている実態を告発。医学部の大学院生が無給で働いている実態も述べ、医師の働き方改革を前提とした医師数増員の重要性を強調しました。