1階と2階は“別施設”となっている「民泊」の前で、話し合う山﨑さん(右)と小林さn(東山区)
4戸の「民泊」計画が進む、行き止まりの路地に面したさら地(伏見区)

 京都市は、2室以上または定員10人以上の宿泊施設にはフロント設置と管理人の駐在を条例で義務付けています。ところが、この条例に実質的に違反する「民泊」計画が相次いでいます。しかも、市は〝条例逃れ〟を容認し、問題ないとしていることから、周辺住民の怒りが噴出。住民らは厳正な指導を求めてそれぞれ、議会への陳情書を提出するなど、運動を強めています。

京都市の規制緩和が〝元凶〟

 問題の発端となったのは、市が昨年5月、国の旅館業法改定に伴い、関連する条例を改悪したことです。以前は、簡易宿所にもフロントの設置が義務付けられていたものを、▽客室1つで、宿泊者の定員が9人以下の小規模施設には免除▽10分以内に宿泊施設に駆け付けられる場所への管理人の駐在義務付け─へと緩和しました。

 この緩和に付け込んだ計画が、東山区福稲下高松町と伏見区深草秡川町の2カ所で判明しています。両町とも、表通りから一歩入ると静かな住宅街。しかし、外国人観光客に人気の東福寺(東山区)や伏見稲荷大社(伏見区)に近いことから、「民泊」が集中してきました。

 東山区の場合は、2階建ての建物で、1階、2階とも所有者、管理会社は全く同じで、合わせれば2室、定員10人となる施設です。ところが所有者は、建物の外側に階段を設置し、1階と2階はそれぞれ定員5人の別の簡易宿所として、許可申請を提出(昨年11月)。これに、市は「別々の施設として扱って差しつかえない」としてきました。

 近くに住む女性は「こんないい加減なやり方が許されるんですか」と話します。同町内の「民泊対策委員会」委員長の山﨑正彦さんも「管理人を常駐させれば、もうけが減るからでしょ。わざわざ外に階段を付けるなど、計画的〝脱法〟行為」と怒りをあらわにします。

 町内会では2月に、管理人の常駐を求めて、市議会へ陳情書を、市には申し入れ書をそれぞれ提出。その一方で、業者との交渉を重ねています。学区の「環境委員会」委員長の小林孝宏さんは「この計画が許可されれば、前例となってしまう。運動を強めたい」と話します。

行き止まり路地消防車も入れず

 伏見区の場合も、〝計画的脱法〟に住民の怒りが広がっています。市内の不動産・管理会社が257平方㍍の一つの敷地に、定員5人の簡易宿所4戸を建設し、分譲販売する計画で、4施設の管理はまとめて同社が行うというものです。

 住民が町内で発足させた「民泊対策委員会」。その委員長の男性(52)は「総定員20人をごまかすために、分譲販売しようとしているとしか思えない」と訴えます。しかも、一帯は、西側の端を京阪電車が通るため行き止まりで、木造住宅が密集する地域。計画地に接する道路幅は約2・8㍍しかなく、火災が発生しても消防車は入れません。

 市は、この計画についても「条例の要件に合えば、基本的に許可する」という姿勢です。同町内会では5月に、住民と宿泊者の命を守るため、計画を許可しないよう求める要望書を市に、7月には議会へ陳情書をそれぞれ提出しました。

 また、「民泊断固反対」のポスターを作成し、各戸に張り出しました。前出の男性は「こんな路地奥に、管理人のいない民泊を許可していいんですか。運動はこれから。町内で力を合わせて、頑張りたい」と話しています。

全施設に常駐義務付けを/共産党「住民の命と安全最優先に」

 この問題で、共産党は一貫して住民と宿泊者の命と安全を守る立場で、論戦してきました。市の条例の改定案に対して、「全ての宿泊施設に人の常駐を義務付けるべき」として、フロント設置の免除規定を削除する修正案を提案。原案に反対しました(昨年5月定例議会)。

 また、東山、伏見両区のそれぞれの陳情を論議した市議会の教育福祉委員会(3月)、総務消防委員会(7月)では、業者の「脱法行為」を厳しく批判。市に対して、計画を許可しないよう繰り返し求めました。