劇中のワンシーン。飯ごうを手に熱演する大野さん(中央)

京都高齢者大学講座受講生ら/老店主と人々の交流コミカルに

 京都高齢者大学校(京都市上京区)の「劇を創る」講座の受講生でつくる「演劇集団 広小路」が2月11日、第40回kyoto演劇フェスティバルで、18年の作品「リサイクルショップ」を上演します。

 懐かしい黒電話や日用品、衣料品を扱うリサイクルショップを舞台に、定年後に店を始めた店主と地域の人々の人間模様をコミカルに描くストーリー。売り上げは二の次で、集う人々の記憶の継承や人生相談など、地域コミュニティーの場としてショップが一役買うホームコメディー仕立てです。

 「言いたいことを劇にする」をモットーに、開講の13年から毎年1つ創作。今回が6作目です。

 メンバーは63~84歳の13人。講師で、京都児童・青少年演劇協会代表世話人の荒木昭夫さん(87)の演出です。

 劇中、店主の元会社の上司役を演じる大野貞雄さん(84)=南丹市=は初出演です。店で見つけた飯ごうを手に、「食べるものがなくて、大勢死んだんや」と少年時代の戦争の記憶をたどるシーンを熱演します。

 大野さんは、開拓団として「満州」(中国東北部)に渡り、命からがら引き揚げてきた一人です。「満州」では敗戦の報を受けて自害した学校長家族の惨状を目の当たりにし、逃げる途中で母親と死別しました。

 安倍政権になって改憲の動きが強まるなか、時代が逆行する危機感を感じるようになり、自身の悲惨な戦争体験を語る活動に加わりました。「劇は初めてで、せりふを覚えるのに精いっぱいですが、戦争反対の思いは伝えたい」と大舞台に挑戦します。

 大野さんが語る場面に、買い物に来た高校生が出くわす設定で脚本を書いた、まり子さん(76)=仮名・京都市=は、「戦争体験を伝えられる世代として、今言わねば」と言います。

 「物も、人も使い捨てるような社会にあって、人との出会い、つながりに自身を再生する力がある」とのメッセージを込めた作品です。

 同校「劇を創る」講座は、19年の受講生募集中です。

 11日(月・祝)午後2時20分、京都府立文化芸術会館(京都市上京区)。1日券=1200円(前売1000円)、高校生以下700円(同500円)。通し券=3500円(前売3000円)、高校生以下2000円(同1500円)。TEL075・222・1046(同館)。