米外資系企業「FS Japan Project6合同会社」が南山城村で進めようとしているメガソーラー建設計画について、関西空港埋め立て工事など約30年間、全国の大規模土木事業に携わってきた1級土木施工管理技士が「そもそも砂防指定地内であのような大規模開発をすべきではない」と批判しています。

■「渓流の盛土」は原則禁止/防災工事だけでも困難

 第1に、あの場所は大規模開発をするのに不適です。普通、大規模開発をする場合、いくつか候補地を調査し、最適な場所を選定します。

 計画地は、砂防指定地で昭和28(1953)年に大災害を受けた地域。崩れやすい山の真下で、近くに国道、鉄道、道の駅があり、小学校、保健センターの進入路もあります。その先にはトンネル、民家があり、土石流などの水害が起きればすべて被害にあいます。なぜ、こんな問題のある場所を選んだのか、理解できません。

 第2に、「京都府砂防指定地内行為審査技術基準」に基づいていません。
 同基準の「第1 総則」の「禁止行為」の(3)に「地下水位が高く、浸透水及び湧水の多い区域、軟弱な基礎地盤区域の盛土」とあります。他県で、「渓流の盛土の禁止」といわれているものです。

 今回の計画では、西側の2つの丘の間の砂子田川が流れている区域が該当します。そこを、盛土して埋め立てようとしているのです。

 府はその区域に水が流れこむ上流の残流域(後背地)が0・1㌔平方㍍以下の場合は、例外として盛土を認めるとしていますが、今回の計画の残流域は0・1㌔平方㍍を明らかに超えています。なぜ、ファースト・ソーラーは技術基準に従わないのでしょうか。

 第3に、砂子田川流域は山裾の直下にあります。曲がりくねって、全体的に広い湿地帯となっており、大雨の際、流水の緩衝域、自然の調整池の役割を果たしていると考えられます。砂子田川流域を埋めて、人工的に迂回させる計画自体、防災上危険だと思います。

 第4に、盛土が万一認められたとしても、このエリアは、広い湧水のある軟弱地盤地域であり、周到な計画を立てても工事は困難です。私にはその姿が見えません。

 ファースト・ソーラーは、最初の第1次防災工事で、直径30㌢~40㌢の管を網の目のように配置して地域内の地下水を流し、土石流などの対策として金網に石を詰めた布団籠で高さ5㍍、幅50㍍から70㍍のダムのような堰堤を5段つくるとしています。

 しかし、大前提として砂子田川の水を流さなければならず、直径1~2㍍の管を使った仮排水路の設置は絶対に必要です。

 さらに、流域全体が軟弱地盤であるため硬化剤を入れて地盤改良をするか、土を搬出して別の土を入れ替える搬出置換をした上で、締め固める必要があります。

 1次防災工事の施工だけでも、軟弱地盤の処理(搬出置換、地盤改良)をはじめ、大型の布団籠堰堤設置、仮排水路の設置など、輻輳(ふくそう)する作業が多く、短期間の渇水期にスピーディーに行うことが出来ないおそれがあります。

 防災工事が長引き、大雨でかえって災害を誘発することになるのでは。私には、最悪のシナリオが容易に想定できます。その際に誰が責任を取るのか。問題だらけの計画は即時中止すべきです。

(写真=FS6社が、渓流に盛土をする計画の予定地。奥の山から流れ込んだ砂子田川が谷筋を手前に流れる。蛇行し、軟弱地盤で形成された谷筋は大雨の際、流水の緩衝域、自然の調整池の役割を果たすと考えられる)

(「週刊京都民報」6月3日付より)