安倍政権下で強まるメディア規制の動きや報道の自由について考えるシンポジウム(実行委員会主催)が1月14日、京都市南区の龍谷大学アバンティ響都ホールで行われ、市民ら400人が参加しました。加計学園問題などについて、菅義偉官房長官を会見で追及する姿が話題となった東京新聞の望月衣塑子記者と、特定秘密保護法の危険性を国連に通報し、国際社会に訴えた、英国エセックス大学人権センターフェローの藤田早苗さんが報告しました。両氏の発言の大要を紹介します。

■パネルディスカッション「強まるメディア規制を乗り越えるには・・・」

 イギリスのエセックス大学人権センターに来て18年、国際人権法を専門に勉強しています。13年に特定秘密保護法をフェイスブックで知り、法律の内容にショックを受け、何かしなければいけないと思い、とにかく国際世論を高めるために英訳して、ロンドンにある「アーティクル19」という有名な表現の自由を標榜する団体に何か発信してほしいとお願いしました。その時、国連に通報したほうがいいとアドバイスを受け、英訳を送りました。

 国会での審議中に国連からの声明が出され、ニュースに出ました。共産党の衆院議員が国会で国連からの声明について質問しましたが、安倍首相は「国連の人は勘違いしておられる」と言いました。その発言を聞いてこの活動に関わり始めました。

 表現の自由に関する国連特別報告者のデビッド・ケイ氏にアプローチして、日本への公式調査訪問を依頼しました。本来15年12月に訪問予定でしたが、日本側が直前にドタキャンし、16年4月に実現しました。その報告書が昨年5月に出されました。朝日新聞で「報道への圧力が指摘され、政府が反発」という内容の記事が出ました。同日の同紙の記事には、菅官房長官が、だれが国連にリンクしたのかと、怒っている記事も出ています。

 プライバシーの権利に関する国連特別報告者のジャセフ・カナタチ氏へ情報の提供を続け、字幕付きビデオメッセージも作成しました。17年5月、カナタチ氏は日本政府へ書簡で共謀罪への懸念を明らかにしました。政府の抗議表明に対し、カナタチ氏は「中身のないただの怒り」として、「プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念にひとつも言及がなかった」「先の書簡を書かなければならなかったのは大きな悲しみであり不本意なこと」と述べました。

■報道への圧力に世界も注視

 同じ頃、東京新聞の望月記者がネットでバッシングされていました。カナタチさんに望月さんの記者としての活動を伝え、彼女のために何かしたいと伝えました。17年間、国連の会議を傍聴してきて、秘密保護法が通った日本を放っておけないと思ったんです。この数年、日本は心配な国になってきています。

 TVキャスター降板は世界のメディアが報じ、「電波停止」の高市総務相発言も注目されました。「報道の自由度ランキング」で日本は72位です。

 人権とは、生まれてきた人間すべてに対して、その人が能力を発揮できるように、政府はそれを助ける義務がある。その助けを要求する権利が人権なんです。

 国際人権法は第2次世界大戦でのナチスなどの著しい人権侵害に対する反省から生まれました。人権は「国際関心事」です。残念なのは、日本のメディアです。イギリスでもフランスでも、市民の側に立って権力を監視し、「パブリック ウオッチドッグ」、権力の番犬と言われます。

 自民党改憲案は9条だけでなく、人権にかかわる条文が本当にひどいことを知ってほしい。日本のジャーナリストは、もっと横のつながりを作り、市民の立場で権力を監視してほしいと願っています。

(「週刊京都民報」1月21日付より)