「いま、いのち・暮らし 憲法をいかす京都11・14府民大集会」での、「2017みんなのいのち守る署名」運動の呼びかけ人の尾藤廣喜弁護士の府政転換の訴えの要旨を紹介します。

■社会保障改悪、国に中止迫れ

 日本の貧困はますます深化し、格差は拡大しています。生活保護制度の利用者は2017年7月で212万7205人で、貧困率は同年6月で15・6%、子どもの貧困率は13・9%です。1世帯当たりの平均所得は下がり続けています。
 貧困が進む第一の原因は、働く者の賃金が下がり続けていることです。13年には労働者の36・2%が非正規でした。いまや若者の2人に1人は非正規です。

 一方、最低賃金は今年の改定でも全国平均で25円しか上がっていません。最低賃金は、生活保護基準との比較で決められてきました。結婚し、子育てし、子どもに十分な教育を受けさせ、自分は豊かな老後を暮らすための賃金であるべきです。これでは若者が希望を持てません。少子化は当然の結果です。
 一方、大企業は空前の403兆円の内部留保をため込み、報酬1億円以上の役員は全国で457人もいます。
 国は、貧困の原因にかみ合った政策を実行しなければなりません。これは緊急の課題です。まず賃金を上げる。そして高齢者、障害者が安心して暮らすために年金を上げ、医療費無料化、介護負担軽減、教育無償化、住宅手当創設、生活保護基準を引き上げるべきです。

 しかし、現実は、高額で支払えない国保料や後期高齢者医療の自己負担増です。また、介護保険では要支援1、2の保険給付を外し、介護サービス利用料の負担増、そしてこれから、要介護1、2の訪問介護の原則自己負担化、利用料負担増を狙っています。
 こういう方針の政府のもと、自治体の長が何をすべきか、はっきりしています。まず府民の命と暮らしを守る先頭に立つべきです。京都のどこでも医療・福祉が安心して受けられるそういう施策をとり、社会保障制度「改革」の中止を国に申し入れるべきです。

 国保が府の統一制度になるのであれば、まず高すぎる保険料を下げる。介護保険料と利用料の負担軽減を図り詐欺的な制度を改めるべきです。そして府独自制度の老人医療の助成を拡充すべきです。

■貧困の村救った「医療費無料化」

 先日、岩手県に行ってきました。旧沢内村(現西和賀町)はかつて豪雪や貧困、多病多死に苦しめられていました。1957年に就任した深沢晟雄(まさお)村長は乳児・老人医療の無料化を全国に先駆けて実行し、村の乳幼児死亡率はゼロになりました。

 旧厚生省が、「無料化は国民健康保険法に反する」と強烈に指導すると、深沢村長は、「法律に違反しているかもしれないが、憲法に合致している」と反論しました。

 今、京都府知事に求められるのはこういう決断と信念じゃないでしょうか。「いのちの署名」の考え方はまさにそうです。幅広く署名を広げることで府政に対し、「福祉、社会保障の充実の先頭に立て」という声を集めて下さい。そして、「京都から命、憲法を守る行政を」の声を全国に広げようではありませんか。ともに頑張りましょう。

(「週刊京都民報」11月19日付より)