京都市右京区出身の映画監督、故・中川信夫氏(1905―1984)を偲ぶ集い「酒豆忌」が30年目を迎える今年、命日の17日を前後して、関連イベントが京都で初めて開催されます。

■酒と豆腐を好んだ監督

 「酒豆(しゅとう忌」は、中川監督が好んだ酒と豆腐にちなんで命名され、映画関係者やファンが集う交流会として、東京で毎年開催されているものです。

 会場となる京都市の「おもちゃ映画ミュージアム」(中京区)では、10日(土)に「中川信夫が映画を観る眼」と題する講演、15日(木)~18日(日)に展示「映画監督 中川信夫展―人間として」を企画し、17日に「酒豆忌」を行います。

 中川監督は、映画評論活動を経て、マキノ・プロダクションに入社し、市川右太衛門プロ、新東宝などに移籍しながら97本の長編作を手掛けました。『東海道四谷怪談』(新東宝、59年)、豊田正子の「綴方教室」の続編「粘土のお面」の短篇を映画化した『かあちゃん』、夏目漱石の小説から『三四郎』など、ジャンルは多彩です。仏や独など、海外での評価は高い一方、ゆかりの地、京都や関西での上映機会は恵まれていません。

 関連の展示は、初の試みで、中川監督の直筆ノートや使用台本、はがき、作家・豊田正子とのシナリオに関する書簡、家族との写真など、約100点を出品予定です。

 講演と企画を担当する「酒豆忌」実行委員の長谷川康志さん(39)は、「家族への愛情、詩に込めた情熱など、人間の魅力に触れてもらい、映画作品を楽しむ機会につながれば」と期待します。

 「酒豆忌」には、遺族や実行委員も参加予定です。長谷川さんは、「関東と関西の映画ファンの交流の場となればうれしい」と参加を呼びかけています。

 ◆長谷川康志氏の研究発表会 10日(土)13時半。戦前の『御用唄鼠小僧』『東海の顔役』の撮影風景を記録した映像の上映あり。1000円(入館料込)。
 ◆中川信夫展 15日(木)~18日(日)。期間中、長谷川さんが解説。開館=10時半。閉館=15日17時、16日20時、17日15時半、18日16時。入場料500円。
 ◆酒豆忌 17日(土)16時~。1500円。同日は、京都文化博物館で『東海道四谷怪談』(12時45分~)を特別上映します。500円(大学生400円、高校生以下無料)。
 講演会と酒豆忌は、要申込み。FAX075・803・0034、または、メール@info@toyfilm-museum.jp

(写真=発見した資料と企画内容を紹介する長谷川さん

(「週刊京都民報」6月4日付より)