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 京都市が昨春、市内中心部を通る四条通で車線を減少し歩道を拡幅する工事で大渋滞を起こしてから、9カ月がたちました。市は渋滞は収まったと説明しますが、四条通の渋滞を避けるため周辺道路に車が流入し、市民生活にさまざまな悪影響を与えています。住民らは「トップダウンで事業を進めた門川市長の失政だ」「車の総量規制に踏み切るべきだ」と厳しい批判の声を上げます。

■総量規制なく周辺道路に自動車流入

 市内の繁華街を抜ける四条通。周辺は京都を代表する商店街・錦市場や店舗、住宅が並び、生活道路となっている細街路が碁盤の目のように通ります。
 「この渋滞見てくださいよ。どうにもならん」。四条通近くで鮮魚店を営む男性(69)が細街路の一つ、御幸町通を指します。車1台と人1人がやっと通れるほどの路地に、車が入りこみ、100㍍以上にわたり列をなしていました。
 御幸町通と並行する富小路通も同様です。「100㍍ほど先の四条通の信号を車で越えるのに、ひどい時は4、5回は信号待ちをする。えらい迷惑や」。錦市場の鮮魚卸店で働く藤原俊和さん(48)は嘆きます。前出の男性は言います。「門川市長は、私ら市民の生活や営業のことを何にも考えてへんのと違うか」

 車線減少による四条通の歩道拡幅事業には、当初から周辺住民やタクシー業者が渋滞悪化を懸念。日本共産党市議団は「マイカー規制のない計画は欠陥計画」と指摘し、繰り返し計画の再検討を要求してきました。
 しかし、住民の声を無視しトップダウンで事業を進めた結果、大渋滞を招き、その後も周辺の交通環境を悪化させているのに、市は車の総量規制に踏み切ろうとはしていません。
 市が急きょ、昨年のゴールデンウイークに実施した四条通の車両調査で、約4割~6割が他府県ナンバーだったにもかかわらず、対策は四条通の迂回(うかい)を誘導する看板や横断幕の増設、高速道路サービスエリアでのPR強化などにとどまりました。その一方で、昨年9月からは市バス100本以上を四条通から迂回。「公共交通優先」に逆行する対策も取ってきました。

■まともな調査もしないまま

 市バスの四条通での運行調査(5月、9月、11月、12月)をもとに、交通局は「ほぼ昨年並みの運行時間になった」と説明。門川市長も「秋の連休でも大きな渋滞は生じなかった」(昨年10月1日の本会議答弁)などと主張します。
 しかし、事業を担当する歩くまち推進室では、歩道拡幅による事業効果をはじめ、一帯の道路の交通量や住環境がどう変化したのかなどの本格的な調査はしていません。四条通で工事完成後に唯一行った調査は、昨年11月22日(日)午後4時~5時の1時間、走行車両をカウントしただけのもので、「しっかりとした調査ではないので数字は言えない。ただ従前に戻ったように感じた」(同推進室)など責任ある対応ではありません。

 市の対応に、錦市場のふぐ専門店店主、伊藤孔人さん(72)は「観光客は増えたが、道路の渋滞で地元のお客さんは遠のき、売り上げは減る一方だ。29億円も使って何のための事業なのか」と言います。
 京都市個人タクシー事業協同組合の嶋田勝一・理事長も「市の姿勢が問われている。タクシードライバーにとって四条通は〝ドル箱〟なのに、渋滞で営業ができなくなっている。死活問題だ。近く、マイカー規制などを求める要望書を出す予定だ」と話しています。(「週刊しんぶん京都民報」1月10日付より)
(写真上=四条通から錦小路通をこえて、車が列をなす御幸町通、写真下=青信号になってもバスや車が動かない状態が見られた四条通)

■低レベルで真剣さ欠く
 立命館大学名誉教授(交通政策学)・土居靖範さんの話 大阪市や神戸市でも、市内中心部の道路の車線減少を検討しており、京都市の「人と公共交通優先」のまちづくりは、全国から注目されてきました。しかし、市のやり方はレベルが低すぎます。車の総量規制をしないまま事業を進めれば、周辺道路の渋滞を引き起こすことは予測されたことです。現状がどうなっているのか、十分な調査や事業の検証もないし、車の総量規制へ踏み込もうともしない。交通施策に対する真剣さに欠け科学的ではありません。これでは、市民の納得や信頼が得られないのは当然です。
 四条通について、地域住民以外のマイカー乗り入れ禁止などとともに、今後の交通対策について、専門家を入れて周辺一帯の広範囲なポイントでの交通調査や住民からのアンケートなど実態調査を急ぎ行ない、総合的交通対策をつくることが求められています。