20150202-01.jpg京都御苑の東側、寺町通りに面した廬山寺の前庭にオレンジ色に染まったクチナシの果実がなっています(写真は1月下旬)。和名は「口無し」の意味で果実が熟しても裂開しない=口を開かないのでクチナシと名付けられたのが通説。
クチナシの白い花は6月~7月頃に一片が7センチ程のプロペラ状の6弁花を咲かせます。花は綺麗で香りがとてもいいので、古来から切り花や香水にしたり、二杯酢にして食べたりしました。果実は黄色の染料や漢方薬として吐血・利尿・解熱剤にも使用されています。ラーメンやたくあんの着色や栗ご飯などに入れるなど多用されています。
また、将棋や碁盤の脚はクチナシの果実をかたどり「口無し」を示していると言われています。一方、文献では、日本では古くから生活にとけこんでいて『日本書紀』、『延喜式』にもクチナシの名が記載され、また平安文学には山梔子衣がよく登場し、『源氏物語』には「ひまひまよりほの見えたる薄鈍、山梔子の袖口など、なかなかなめまかしう、奥ゆかしう思いやられ給ふ」とつづられています。
廬山寺(正式名=廬山天台講寺)は、紫式部邸宅跡と伝えられています。このクチナシの木が、もし前述した源氏物語の一節に書かれた千年昔のクチナシと同じであったらと思うとちょっとロマンチックな気分になります。六月頃に廬山寺に行かれたらぜひ前庭のクチナシの花を見て紫式部や源氏物語に思い馳せてればこころ和むでしょう。(仲野良典)
「口なしの花さくかたや日にうとき」(蕪村)
「山梔子(くちなし)を乾かしありぬ一筵(むしろ)」(夕芽)
参照=木村陽二郎監修『図説花と樹の大事典』、牧野富太郎原著『新牧野日本植物圖鑑』他。