六道珍皇寺 猛暑の京都の街でお盆恒例の六道参りが東山区の六道珍皇寺で10日までの4日間行われています。
 六道珍皇寺は建仁寺塔頭の一寺で通称「六道さん」と呼ばれ、親しまれています。六道とは地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上界の6つの冥界で、善悪の所業で巡るとされています。平安時代から東山の阿弥陀ケ峯、五条阪、今熊の辺りの山麓は「鳥辺野」へ葬送する中途のこの附近をこの世とあの世の境で「六道の辻」と呼ばれていました。同寺本堂の裏にある井戸(今も竹筒で覆ってある)が冥界の出入り口になり、写真のような四方を壁で覆った釣り鐘堂の穴から出ている綱を引っ張って迎え鐘を鳴らして先祖の精霊をお盆まで一緒に暮らします。そして五山の送り火でまたあの世に送るという謂われです。
 六道参りには近畿を中心に大勢の人が訪れます。今年も同寺の周りを囲む長い順番待ちの老若男女の行列ができ、穴から出ている綱を引っ張っては神妙に手を会わせ、先祖の法名を書いた水塔婆に槇の葉っぱで水を掛けて精霊を乗せて家に戻っていく風習が印象的です。大津から参りに訪れた夫婦は「毎年、お参りに来てます。1年に1回、私らの両親やご先祖を迎えてまた送ります。そして何時までも健康でいられますようお願いしています」と語っていました。京都で「野」のつく地名は葬送地が多く「蓮台野」の千本釈迦堂や千本閻魔堂でも六道参りが行われています。(仲野良典)
 「迎鐘にこたへして来る山彦(こだま)哉」(春丸)