橋下徹・大阪市長が率いる「維新の会」が政党化し、京都含め全国で進出を狙っています。『橋下「維新の会」がやりたいこと──何のための国政進出?』(新日本出版社)を出版した石川康宏・神戸女学院大学教授に、「維新の会」の狙いや特徴、京都への影響などについて聞きました。

“財界いいなり政治”の継続

 ―「維新の会」にはどのような特徴がありますか?
 彼らの政治は、市民生活の支援を切り捨て、浮いたお金を大企業支援に活用するということで一貫しています。橋下氏は、大阪府知事時代にも、大阪市長になってからも、医療、福祉、教育、中小企業、商業、農業など市民の生活関連予算を切り捨てて、その一方で、大企業が行う開発や、大企業を招き入れるための開発には、手厚い予算を投じています。
 橋下氏は「小泉・竹中路線をさらにもっと押し進めることがいまの日本には必要」(10年6月8日)と述べましたが、ここに彼らの姿勢や役割がはっきり表れています。つまり「維新の会」は「大企業が潤えば、いつか国民も潤う」という破たん済みの「構造改革」路線の継承者だということです。それは自民党・民主党に続いて財界・大企業を支援しようとするものでしかありません。
  ―どうして「維新の会」が注目を集めているのですか?
 自民党・民主党が国民の批判を受け、これらを中心にした政治の体制が崩れていることが根本です。世論調査によれば、民主党や自民党の支持率は低迷し、両党の大連立への期待もわずかなものです。国民は新しい政治への転換を求めています。
 そういう中で「維新の会」が、従来の政治を転換してくれるのではないかという誤った期待が広められ、それによって注目されているわけです。この点ではマスコミの責任は重大です。
 90年代末以降、財界は、いつでも自民党と民主党のどちらが政権について「財界いいなり政治」を行う「二大政党制」をめざしてきました。しかし、これが破たんの危機に瀕しています。その時に、財界の願いにすり寄りながら、大阪から手をあげたというのが橋下「維新の会」の位置づけです。国民の批判をうけた「財界いいなり政治」を継続するには、国民の意向をはねかえす「力」が必要になりますが、それを「決定する政治」などの言葉でごまかして、現在の「政治の停滞」を批判する国民の支持を集めようとしています。
 ―「維新の会」が狙う道州制とはどういったものですか。
 橋下氏は、府知事になった08年の秋には「関西州」や「道州制」を語り始め、今日までそれを政治改革の中心においています。彼らがつくった「維新八策」でも「道州制」は第一項目の中心部分になっています。
 「道州制」はもともと関西財界の発案ですが、現在では日本経団連はじめ財界全体の優先政策になっています。全国47の都道府県による「地方自治」を、北海道、東北州など全国で10程度の「地域経営」に転換します。例えば京都府、大阪府、滋賀県、奈良県、和歌山県、兵庫県はすべて解体され、1つの「関西州」にまとめられます。それぞれがもっていた予算は「関西州」に集められ、この巨大予算が「大企業が潤えば、いまに国民も」という理屈のもとに、「関西州」内部の大企業に集中的に投下されるわけです。つまり「道州制」は大企業本位の政治そのもので、そこから「究極の構造改革」とも呼ばれています。(「週刊しんぶん京都民報」2012年9月30日付掲載)