京都府議会が22日に可決した「東日本大震災で発生した災害廃棄物の広域処理に関する決議」について、日本共産党京都府議団の前窪義由紀団長は23日、同決議への対応に関する見解を発表しました。


京都府議会「東日本大震災で発生した災害廃棄物の広域処理に関する決議」の対応について(見解)

2012年3月23日
日本共産党京都府会議員団
団長 前窪 義由紀

 昨日(3月22日)閉会した京都府議会2月定例議会の最終本会議で自民・民主・公明提案の「東日本大震災で発生した災害廃棄物の広域処理に関する決議」が我が党議員団も賛成し可決されました。 この「決議」の態度をめぐり、最終本会議を前後して多くの府民の皆様から、ご意見・ご要望が出されてきました。このため、府会議員団の基本的な考え及び対応について表明します。
 1、東日本大震災によるぼう大な災害がれきに対し、被災地の首長や自治体、被災された方々等から「復興のためにも処理を急いでほしい」と痛切な声があがっています。震災から一年が経過したにもかかわらず、災害がれき処理が「全体の7%」と言われるように、進まない最大の問題は、政府や東京電力が災害がれき処理や放射性物質への責任ある対応をしてこなかったことにあります。このため、政府が総力をあげ、被災地での処理能力の強化等、復興にむけた処理の推進をはかることが重要です。同時に、被災地の現実と災害がれきの状況をふまえ、広域処理を住民合意で行うこと自体は必要と考えます。
 また、国の災害がれき処理対策の遅れが問題であるにも関わらず、災害がれきの受け入れに反対することをバッシングしたり、それを国が先導するかのような動きに対し、厳しく批判するものです。
 2、災害がれきの処理に対し、「焼却した場合に放射性物質が拡散するのではないか」「廃棄物の焼却場周辺や焼却灰埋め立て処分場周辺は大丈夫か」などの不安や政府への不信の声が多くだされています。こうした不安に対し、政府の責任ある対応が求められています。
 ところが、政府は、特別に管理が必要な指定廃棄物を、セシウム134とセシウム137の濃度合計で1キログラムあたり8000ベクレル以上とし、これ未満は、一般廃棄物と同様に扱うなど、十分な説明も根拠の明示もないまま、広域処理の基準に転用したことは大問題です。この基準は、政府の試算でも廃棄物の処理に携わる作業者に年間1ミリシーベルト近い被ばくを容認するもので、この基準のまま「広域処理」の名で、国が地方自治体に処理をゆだねることは絶対に認められません。廃棄物の基準および放射線防護対策を抜本的に見直し、強化するとともに、放射能を帯びた災害がれきは、「封じ込め、拡散させない」という放射性物質の対応の原則にのっとり、国の責任で処理することが当然であり、厳格な対応が求められます。
 3、災害がれきを受け入れるうえでは、(1)自治体で焼却されている「通常の廃棄物」と同程度の放射能の量・質レベル程度以下のものに限ること、(2)処理の各段階で、放射能測定の体制に万全を期すとともに、そのための体制、財源、結果の公表については国の責任で行うこと、(3)処理の各段階の測定結果についてすべて公開すること、(4)住民合意が大前提であり、国や関西広域連合、京都府が、合意がないまま焼却・処理施設をもつ自治体に広域処理を押し付けないこと、(5)受け入れる自治体への国による財政措置を含む全面的支援策、が必要です。こうした条件を整えないまま、災害がれきの受け入れは認められません。
 4、「決議」の採択をもって、一部マスコミで決議全文を示さないまま「がれき受け入れ決議」等、現行基準のままの「広域処理」を積極的に推進する内容であるかのような報道がなされ、また、山田知事が「広域処理」を推進する立場から「大変大きな後押しになる」と述べたことは、事実をゆがめるものです。さらに「関西広域連合」が災害がれき受け入れの基準を設け、大阪湾広域臨海環境整備センター(フェニックス)に埋設する方向が示されようとしていることは、焼却施設をもつ自治体に受け入れを強制するものといわなければなりません。
 このため、「決議案」が自民党会派から提案された際に、我が党議員団は「国や東京電力の責任の明記」「基準の抜本的見直し」等の案文修正を求めるなど、府議会として京都府による受け入れ前提の動きを見直すものとなるよう取り組みました。
 5、最終本会議当日、小さい子どもたちとともに多くの府民の方々が「決議の採択をやめてほしい」と各会派に要請にこられました。我が党議員団は、切実な声に真正面から向き合い、耳を傾けるとともに、我が党議員団の立場についても誠実に説明しました。そして、その場で出された不安の声も反映した最終本会議討論を行いました。
 災害がれきの処理と放射能が問題解決の複雑さを深めている中にあって、本会議場で、我が党議員団の討論に、要請にこられた方々による拍手がはからずも起ったように、被災地と心一つに、また、なによりも府民の安心と安全を守る立場から、全力を尽くします。
 歴代政府と東京電力は、今なお通常の何十倍もの放射線の中で生活し、子どもたちからも「結婚できない」「将来子どもが産めるのだろうか」などの言葉が出されている現実をしっかりと認識し、深刻な危険に直面させた反省と責任の上に立ち、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故という未曽有の災害から復興をすすめる本格的な取り組みに全力をあげるべきです。
 我が党議員団は、被災地や避難されてきた方々、そして子どもの将来への不安を抱かれるすべての方々と力をあわせて、いっそう全力をあげるものです。

以上