「龍年の京菓子」展 来年の龍年を間近に迎え、「京菓子資料館」では来年の干支である「龍」をテーマにした「龍年の京菓子」展を開催しています。運営サポートしている京菓子司俵屋吉富の代表銘菓の当たり年でもあり、秘蔵の龍のコレクションなども展示しております。2012年3月20日まで。
 龍は十二支のなかで唯一想像上の瑞獣です。中国では、龍は皇帝を表すシンボルであり、特に五本爪の龍は皇帝しか使用することができないといいます。龍は仏教美術を主な媒体として中国から日本へと伝わりました。日本では、龍は民衆の生活に密接な水神、仏教の守護神として、人々から尊ばれる信仰の対象となっています。寺院の天井画には鋭い目つきでこちらをにらむ龍図や大切な宝珠をうっかり寺院に置き忘れてしまった龍の話、僧侶が弥勒菩薩の出現を待つために龍となって池に住む物語など、様々な伝承が残っており、今も想像をかき立てる存在として生き続けているのです。
 銘菓「雲龍」もまた、龍の姿に魅せられた俵屋吉富七代目菓匠・石原留治郎が、相国寺の所蔵である「雲龍図」(狩野洞春筆)から受けた感動を京菓子に表現したものです。相国寺四代目管長、故山崎大耕老師の命名により「雲龍」と名付けられました。
 実は龍をモチーフとした京菓子はあまり多くなく、主に龍年に「干支菓子」として表されるにとどまります。龍はその姿をそのまま菓子に表現すると、リアルで食欲が失せたり、花鳥風月をモチーフとした、繊細で優しい「京菓子」のイメージからかけ離れたものとなってしまいかねません。そこで、昇天する姿を螺旋で表わしたり、龍がもつ宝珠をかたちづくったりなど、京菓子ならではの工夫をこらして表現しています。
 平成24年の龍年によせて新しく創作いたしました干支菓子「龍吟」は、鱗と雲で龍のイメージを保ち、また正月菓子らしく華やかで、そして龍独特の神秘的で、男性的でたくましい姿を菓子に託しました。あけぼのの空高く昇天していく龍の雄々しい声が聞こえてきそうです。
 展示室では「龍」にちなんだ京菓子や物語、絵画そして茶道具なども紹介しています。龍以外の十二支の動物たちの京菓子は、動物たちの愛らしさに心がほっとします。
 季節の移ろいとともに楽しめる京菓子ですが、とくに年末年始のお菓子は華やかです。干支菓子や御題菓子、迎春菓子などは眼と舌を楽しませてくれます。(〈財〉ギルドハウス京菓子学芸員・長野静香)

 入場無料。茶席700円(菓子付)、リーフレットご持参で500円にご優待。問い合わせ先は京菓子資料館=京都市上京区烏丸通上立売上ル柳図子町331-2。地下鉄烏丸線「今出川」下車北へ徒歩5分。Pなし。TEL075・432・3101/FAX075・432・3102(俵屋吉富烏丸店)。
「週刊しんぶん京都民報」2011年12月18日付掲載)