東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、日本共産党は、「政府は、原発からの撤退を決断し、原発をゼロにする期限を決めたプログラムの策定を」と提唱、国民的運動を呼びかけています。原発問題、エネルギー政策についての府民各層の主張・提言をシリーズで紹介します。

地震、活断層が危険

 私の専門は固体地球物理学・測地学で、重力変化や地殻変動の観測を長年行ってきました。地震予知連絡会の委員も務めました。
 若狭湾の原発は、いずれも活断層の直近に位置します。ひとたび事故となれば、いつ収束するかもわからないことは、福島原発事故からも明らかです。同じ市内に住む昨年生まれた孫が安心して暮らすことができるよう、「原発をゼロに」と運動するこの会の代表を引き受けました。
 日本列島は太平洋、ユーラシア、フィリピン海、北米の4枚のプレート上にあります。このプレート間のせめぎ合いで、中部圏から近畿圏は東西方向に、100キロ間で年約1センチずつの割合で縮んでいます。この影響でできた活断層は、地殻の岩石が耐えられるひずみの限界を超えて1000年に一度、同規模の地震を繰り返します。若狭湾周辺の活断層が動いて地震が起きれば、震度5~7の揺れが原発を襲います。
 若狭湾の原発の耐震基準に用いられた揺れの指針は、550~800ガルとなっています。これでは地震の震源近くの揺れに耐えることはできません。地球の重力で物体が落下する加速度は980ガルで、1000ガル以上の揺れ(加速度)だと「物体が浮く」という現象が起こります。マグニチュード6.8の地震でもこの現象が観測されました。若狭湾周辺でマグニチュード6以上の地震が起きれば、原発は重大な事故に見舞われます。
 中部、近畿には100以上の活断層が見つかっていますが、いつ動くかはわかりません。未発見の活断層もあり、明日にでも地震になるかもしれません。
 私は阪神淡路大震災のとき、六甲山地に精密観測計器を設置して地殻変動観測を続けていましたが、震災の直前までまったく目立った変化もなく、この地震を予知することができませんでした。地震の中には前兆的な地殻変動が現れないものもあります。いつくるかもしれない地震を考えると、原発事故におびえる生活には我慢できません。一刻も早く原発をなくすべきです。(「週刊しんぶん京都民報」2011年9月4日付掲載)
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