元京都大学原子炉実験所助手の小林圭二さんに、関西電力高浜原発3号機(福井県高浜町)で運転している「プルサーマル」の計画や、「核燃料サイクル」、使用済み核燃料の問題点などについて語ってもらいました。

核兵器製造に転用のおそれ

 ─使用済み核燃料などから生まれたプルトニウムから核兵器が製造される危険性はあるのですか
 小林 インドでは1974年に平和利用を口実にした原子炉でプルトニウムを作り、核爆発を成功させました。
 また、高速増殖炉は核兵器製造の最短距離にある原子炉です。日本では、「核燃料サイクル」が成功していないにもかかわらず、政府は高速増殖炉計画を中止していません。高速増殖炉があれば、物質的にはすぐにでも核兵器を製造することができます。
 1968年に行われた外務省内の会議記録では、高速増殖炉をただちに核武装できる手段と位置づけている表現があります。非核3原則や平和憲法を無視して、軍事利用へ転換される危険性も注意しなければなりません。

すべての原発なくす決断を

 ─使用済み核燃料が増えていくと、どのような問題が起こりますか
一方通行の原子力行政
 小林 「核燃料サイクル」は実現できず、行き場を失った使用済み核燃料はどんどん増えています。各原発にある使用済み核燃料プールは、容量が残り少なくなっています。
 現在事故原因を解明中ですが、福島第1原発の4号機では、使用済み核燃料プールで燃料が反応し、水素爆発が起こったことが考えられます(3号機から水素が混入したとの説もあり)。1~3号機は運転中の事故でしたが、4号機は定期点検中でした。
 定期点検のために、原子炉の中にあった「まだ燃える燃料」を使用済み燃料プールにいったん置いておくということはよくあることです。その燃料が地震によって冷やせなくなり水と反応した可能性があります。
 定期点検中の原発含め、すべての原発でこうした事故が起こる危険性があります。
 福島原発事故が起こり、原発からの撤退を求める世論が広がっています。原発や高速増殖炉から生まれたプルトニウム利用が目的の「核燃料サイクル」は事実上破綻しています。「もんじゅ」の廃炉はもちろん、すべての原発をなくす決断が求められています。(「週刊しんぶん京都民報」2011年8月7日付