恵心院キキョウ 宇治川の中之島に架かる朱色の朝霧橋右岸にある恵心院(えしんいん)の本堂前庭では、見納めの純白のテマリアジサイや青いラッパ状のアガパンサスなどに混じって紫のキキョウが清楚な気品を漂わせて咲いています。
 「きりきりしゃんとして咲く桔梗かな」(一茶)と愛でられるキキョウは古くから栽培されています。初夏に咲き、秋にもう一度咲くキキョウ(キキョウ科プラティコドン属=プラティはギリシャ語で広い、コドンは鐘の意で花の形状に由来)は、秋の七草の一つ朝貌(あさがお)のことといわれています。
 恵心院は弘法大師開祖の古刹龍泉寺と伝えられていますが、天台宗学僧で有名な「往生要集」の編者恵心僧都源信によって再興され、恵心院と称するようになったと説明されています。源氏物語宇治十帖のヒロイン浮舟を助ける横川の僧都は源信がモデルと言われています。
 恵心院付近の宇治川右岸には橋寺、宇治上神社や興聖寺、左岸には平等院など建ち並んでいますが、真夏に訪れる人は少なく静寂です。そんな宇治中之島界わいから天ヶ瀬ダムまで森林浴を兼ねての散策も楽しいものです。(仲野良典)