“貧困”国家の深層 NHK教育テレビが3月2日より週1回、4回にわたって放送した「知る楽 歴史は眠らない」の「“貧困”国家日本の深層」はなかなか見応えのある番組でした。経済評論家の内橋克人さんが貧困を引き起こす社会構造を明治時代から振り返り解説。番組の最後に内橋さんが語られた言葉、「貧困は社会の構造が生みだすもの、国の根源的なあり方にかかわる」「貧困問題を自己責任論に閉じ込めて論じる限り、明るい21世紀の未来を招くことは困難。私たち一人ひとりが社会の病理として真正面から向き合うべき」はとても印象的で、説得力あるものでした。
 この番組の4回目、23日放送の「自己責任論の克服に向けて」では、京生連(全京都生活と健康を守る会連合会)が繰り返し登場、紹介されたいへん驚きました。内橋さんが京生連の事務所を訪ねるところから始まり、事務局長の高橋瞬作さんにインタビュー。高橋さんは「生活保護申請者を支援する組織で長年活動を続けてきた」とういうナレーションと団体・名前のテロップ入りで紹介され、3度にわたって登場し、内橋さんの質問に答えて生活保護申請の現場での実態、保護申請者へのサポートの内容を実にわかりやすく語っていました。さらに内橋さんが、昨年生活保護を申請したという男性への聞き取りを行い、また日本の生活保護行政の問題点を解説する場面がありましたが、いずれも京生連の事務所の中でした。これまでこの種の番組では、生活と健康を守る会などの団体を取り上げても、実名ではなく「市民団体」という紹介にとどまっていたのですが、今回はそれとはまったく違っているばかりか、京生連が前面に出たものになっていました。というよりも、この番組自身が京生連の全面的な協力で成り立っているのだということを強く感じました。そのことは、番組の最後に流れる政策スタッフ名のテロップのトップに「資料提供 全京都生活と健康を守る会連合会」とあったことでも裏付けられます。貧困解消のために長期にわたって粘り強く運動し、NHKが大きく取り上げるまでにいたった京生連、そして高橋瞬作さんにあらためて敬意を表したいし、また素晴らしい番組を作られたNHKディレクターや関係者のみなさんに拍手を送りたいと思います。なお、元京都市職員で福祉行政を担当された花園大学の吉永純教授も内橋さんのインタビューを受けておられました。(家野貞夫)