渉成園のスイレン 東本願寺別邸の名勝渉成園(枳穀邸、下京区)は、「渉成園十三景」と称される名園で、樹木や草、茶室などの建物と大きな池のある四季折々に美しく風情あふれる庭園です。6月に入り、大きな池には群生するスイレン(スイレン科=Nymphaeaceae)が白い清楚な花を咲かせています。和名はヒツジグサ(未草)と言い、未(ヒツジ)の刻(午後2時)に花開くことから名付けられましたが、日の出とともに花が開き、午後から夕刻にかけて閉じ、名前とは必ずしも一致しないこともあります。8月中旬頃まで美しく咲かせてくれます。
 同庭園は、徳川家光から東本願寺13代宣如上人に寄進された現在地に、詩仙堂などを作庭した石川丈山の趣向をいれた作庭だと伝わります。茶室などの建物は安政の火災や蛤御門の変で焼失し、現在の池の周りに点在する建物は明治以降に再建されましたが、庭園そのものは当初の作庭を引き継いでおり、国の名勝に指定されています。庭園を訪れる人は僅かですが、静寂の中に四季折々の風雅を漂わせ、こころ癒されます。(仲野良典)