2日、城陽市で行われた衣笠洋子候補政談演説会での、日本共産党・市田忠義書記局長の演説(大要、文責・見出しは編集部)は次のとおりです。
 みなさん、こんばんは。今日はいよいよ1週間後に迫った京都府知事選挙で、1人ひとりにあたたかい政治の光をあてようという決意でがんばっておられる衣笠洋子さんをなんとしても知事に押し上げていただきたいとお願いにまいりました。
「小泉改革」で広がる「社会的格差」と「貧困」
 さて、みなさんの暮らしは今、どうなっているでしょうか。小泉内閣が誕生して5年がたちました。今年の国会では、格差と貧困の問題、BSE問題、ライブドア事件、耐震強度偽装事件、米軍再編問題、どの問題をとっても小泉政治の破たんが明らかになりました。
 特に格差と貧困の問題では、どの世論調査を見ても、7割から8割の人が「格差が広がった」と答えています。その原因が小泉「構造改革」にあると答えた人が、「読売新聞」では56%でした。生活保護世帯は100万世帯を超えました。相次ぐ大企業のリストラや政府の「規制緩和」によって、派遣だとかパートだとか請負だとかの不安定な労働者が、小泉内閣の5年間で273万人も増えました。働いている若い人の2人に1人、働いている女性の2人に1人が非正規社員です。そうした人の平均年収は133万円、月10万円前後しかありません。
 その一方で、「人の心はお金で買える」と言ってはばからないホリエモンのような人物がもてはやされています。安倍官房長官は「堀江さんが仕事で成功できたのは小泉さんの改革の成果だ」と言いました。すると堀江氏は「小泉改革の規制緩和のおかげで非常に商売がしやすくなった」と言いした。武部幹事長は、去年の総選挙で堀江氏の応援に出かけて「私の息子です。私の弟です」と言いました。自民党や政府がお墨付きを与えて、マネーゲーム、貯蓄から投資へという流れがつくられたのです。
 また、派遣労働者を工場で働かせるのは今まで法律違反でした。ホリエモンの錬金術のような手口も禁じ手でした。ところが「規制緩和」万能路線を進める小泉改革の結果、日本社会をモラルもルールもない「勝ち組、負け組み社会」に変えてしまいました。こういう政治を進めてきたのが自民党、公明党であり、もっとスピードを速めなさいと背中を押してきたのが民主党でした。
失業率悪化日本1、1番被害受けている京都
 この小泉政治のつくりだしたゆがみ、京都が一番被害を受けています。山田知事は小泉改革に大賛成の知事です。京都の事業所の減少は全国トップクラス。2001年から2003年の間だけでも2万3000の事業所が倒産、廃業し、13万人が職を失いました。失業率の悪化も非正規社員の割合も日本一です。青年の失業率は全国平均の1.3倍にのぼります。
 厚生労働省の調査によると、正社員の男性は34.7%が結婚をしているのに、非正社員では14.8%しか結婚していません。結婚する相手がいないのではなく、結婚したくても収入が少なくて出来ない人が増えているのです。
 日本共産党の府会議員団が、府が多額の援助金を出している誘致企業には、一定の割合で京都の新卒者を正社員として雇用さすべきでないか、「雇用促進のための企業誘致補助金」なんだからその名前のとおりやりなさいと要求したら、知事は「そんなことをしたら企業が来なくなる」と言ってのけました。
 この制度は、大企業が本社や工場を京都に移転すれば補助金を出すというものです。
 本社を長岡京市に持つ村田製作所が同市内で少し場所を移したら、京都府民の雇用は一人も増えていないのに1億円補助しました。滋賀、福井の工場から労働者を連れてきたらさらに5000万円追加しました。合計1億5千万円も補助したのです。大企業にはこれだけ優遇しながら、3万人が従事する伝統産業、和装産業への予算は半分に減らしてしまいました。こんな政治を続けさせれば、日本の未来も京都の未来も真っ暗になってしまうんじゃないでしょうか。
暮らし、福祉守る本来の仕事投げ捨てた山田府政
 小泉改革をのもとで府政の構造改革を進める知事と、それを支える自民、公明、民主のオール与党政治のもとで京都の政治はいったいどうなったか。府民の命や暮らし、福祉を守るという自治体にとって1番大事な仕事を投げ捨ててしまったのが京都府政の最大の特徴です。
 例えば、お年寄りにとっての小泉政治と京都の政治はどうか。小泉内閣はわずかばかりの年金にも新たに税金をかけるなど増税のラッシュです。年金は1円も増えないのに、取られる税金はどんどん増える。すると今度は自治体が、税金を払えるようになったんだからと国保料や介護保険料を取り立てる。国が税金を取り立てたら便乗して国保料や介護保険料を引き上げる。血も涙もない政治とはこのことです。
 国保料が高すぎて国保料を払えない人が、京都で増えています。すると知事は、保険証を取り上げろという通達を市町村に出しました。こんな通達を出している知事は京都府だけです。
 その結果、保険証を取り上げられた人は京都府下で約3万世帯。滞納世帯に占める保険証を取り上げられた人の割合は、全国平均29.6%に対し、京都府36.9%で東京の2倍です。
 国保証を取り上げられた人は窓口で医療費を全額支払わなくてはなりません。保険料が払えないのにどうして医療費が払えるのか。これでは医者にかかるなと言っているのと同じです。
 もう1つ、京都府政を調べていて驚いたことがあります。介護保険料の値上げが相次いでいることです。和束町では1.7倍です。日本共産党の府会議員団が、独自の減免制度を実施すべきでないかと迫ったら、山田知事は「都道府県は市町村の援助団体でない」といかにも官僚らしい冷たい態度でしたが、それなら京都府政はいらないんじゃないでしょうか。
 お年寄りの医療に大きな役割を果たしてきた府立洛東病院を、1年前までは充実、強化すると言っておきながら廃止しました。洛東病院の患者さんが追い出されただけではありません。これが引き金になって京都府内の公立病院の廃止、縮小、民営化の動きが相次いでいます。自然にそうなったのではなく、山田知事が、市町村の仕事をできるだけ切り縮めろと号令をかけた結果、舞鶴市民病院や精華町の国保病院が民間委託される、京丹後市の弥栄病院の産科が休止になったのです。
子どもの医療費無料化拡充、衣笠さんにやってもらおう
 子どもを安心して生み育てられるようにするという課題には、どんな自治体も真剣に取り組んでいます。なかでも子どもの医療費を無料にしてほしいという強い願いがあります。
 京都府では、小学校入学までは一切の条件をつけないで無料にしてほしいという請願が昨年12月に府議会に提出されました。5000人を超える署名を集めて提出したのですが、山田知事は「京都の制度は全国トップクラス」と拒否しました。一般会計予算が京都府の8000億円と同規模の栃木県では今年度から、小学校3年生までの子どもの医療費を無料にしました。
 無料化はお金がないからできないのではありません。就学前まで無料だったら、11億円あればできます。企業誘致のために1社に20億円の補助金を出すというのが京都府の立場です。知事がその気になればすぐにでもできる。足りないのは、お金ではなくて、府民を思いやるあたたかい心がかけているのではないでしょうか。今の知事にやる気がないんだったら、やる気のある知事に変わってもらおうではありませんか。子育て日本1を公約している衣笠さんならすぐにやってくれることは間違いありません。
台風23号被害が拡大した失政
 山田知事が進めてきた構造改革は、府民の安全を犠牲にしてきました。おととし23号台風で京都は、とりわけ大きな被害を受けました。京都府の予算を調べてみましたら、23号台風がおこった前の年、2003年の河川改修費はなんと5年前の56%、約半分に減らされている。これが被害が大きくなった原因です。
 しかも、「官から民へ」、土木事務所の再編で舞鶴の土木事務所の職員を大幅に減らしました。今年の2月府議会で「50人近くいた職員が6人になった。市民は大きな不安を持っている」。共産党の府会議員じゃなくて自民党の府会議員がこういう質問をしました。誰の目にも山田府政の失敗、失政は明らかになったのではないでしょうか。
 私、京都に来て驚きました。今の知事がどんなポスターを張っているか。「安全・安心、希望の京都」。よくこんなポスターを張れるもんだなと思います。府民の命を切り捨てておいて、何が「安心、安全、希望の京都」か。このポスターこそ偽装、粉飾ポスターではないでしょうか。
31000通の府民の声を示す選挙に
 「民主府政の会」が京都の府政について府民アンケートを実施したら、なんと31000通の回答があったそうです。私も京都で長く活動し、何度も選挙をたたかった経験があります。私の記憶ではどんな選挙でもアンケートをやってたくさん回答があったときでも2000から3000でした。3万以上のアンケートの回答が返ってきたというのは史上空前であります。
 やはりその背景に小泉「改革」5年間の、山田府政4年間が京都府民の被害の深刻さがある。だからこそ何とかして欲しい。その府民の気持ちがこのアンケートに表れたのだと思います。主権者は1人ひとりの府民です。岩国でもそうでした。1人の力は小さいように見える。その声を集めれば政治を変えることができる。衣笠さんが訴えておられる「府民と心がかよう府政」、この思いはまさに府民の圧倒的多数の声です。この声をみなさん次の日曜の投票日、主権者みなさんの1票でご一緒に示そうではありませんか。
海老名香葉子さんの3月10日
 最後にもう1つどうしても言いたいことがあります。それは、憲法と平和の問題です。自民党、民主党、公明党が、9条を変えて、「日本が再び戦争できる国に」とそういう策略をしています。先日、私はエッセイストの海老名香葉子さんが中心になって作られた東京大空襲の犠牲者を慰霊する碑建立1年の記念式典に招かれて行ってきました。
 海老名さんは、みなさんもご存知だと思うんですが、61年前の東京大空襲、3月10日、6人の親族、家族を亡くされました。おじいいさん、おばあさん、おとうさん、お母さん、そして兄弟2人、残ったのはお兄さん1人でした。海老名さんは、みなさんもご存知のように東京大空襲でおじいさん、おばあさん、お母さん、お父さん、兄弟、全部で6人の家族を1度に亡くした。 61年前の3月10日でありました。海老名さん自身は沼津に学童疎開で行っていました。その時、ちょうど東京の方角の空は赤く染まっていたそうです。自分のランドセルや学用品や机や本棚が焼けてしまってもいいけれども、家族だけはなんとか助かって欲しい、と額を地面にすりつけるようにしながら拝まれたそうです。全部亡くなりました。
 海老名香葉子さんは、戦後、毎年3月10日には墨田区の焼け跡に立たれました。林家三平さんと結婚すれば三平さんと。子どもが出来れば林家正蔵さんや林家一平さんと一緒に焼け跡に。孫が出来れば、孫を抱いて。そして、「日本中、2度と戦争は繰り返してはならない」と訴え続けられてこられました。
9条をどこよりも大切にしてきた歴史と伝統のまち
 私は、日本の憲法9条には、日本全国におられる、無数の海老名香葉子さん、そしてアジアで犠牲になった2000万の人々の無念の思いが込められていると思います。そして、その思いを受け継いだ人々が草の根で憲法9条を守り、支えてこられました。
 中でもこの京都は、憲法を暮らしの中に生かそうと、28年も知事として頑張ってこられた蜷川さんや、先日亡くなられた寿岳章子さんなど多くの府民によって、憲法が日本のどこよりも大切にされてきた歴史と伝統のあるまちです。
 そのまちで憲法守る草の根からの運動を支え、担ってこられたのが衣笠さん。あの山田知事と大違いです。全国知事会で石原知事もびっくりするようなことを言う人物であります。ですから衣笠さんには京都の各界各層の皆さんが支援の声を上げているだけではありません。京都は全国の政治の先取りをするところであります。
 全国の人が京都の行方に熱いまなざしを注いでいる。作家の井上ひさしさん、澤地久枝さん。映画監督の山田洋次さん。一時は民主党の国会議員だった大橋巨泉さん。京都だけではなく全国から特別の期待が寄せられています。衣笠さんの勝利で、日本の宝だけでなくて世界の宝と言われてる憲法の精神を花開かせるために、お互い力を合わせて残り1週間頑張り抜こうではありませんか。
当たり前の暮らしがしたいと願う府民と日本共産党の協力で
 今度の京都府知事選挙は、暮らしと憲法、平和のかかった大変大事な選挙です。相手陣営には、自民党・民主党・公明党・社民党と、日本共産党以外のすべて政党が参加しています。数は多いけれど相手は実はメロメロなんです。がたがたです。今ほど、自民党小泉「構造改革」の破たんが誰の目にもわかりやすくなっている時はありません。
 がさネタメールでちょっと助かっているだけの話です。そこへ2大政党のもう1つの党。国会で質問するときはなぜか頭を下げてばっかり。「逆イナバウワー」と呼ばれています。前原さん京都に来られているそうですけれども。頭数を多いけれども、中身は本当にない。府民のためにまともにものを言うことは、相手の陣営にはできない。
 われわれの陣営には額に汗して、まじめに働き、必死でがんばっている良識ある府民がいる。思想信条の違いを越えて、人間らしい当たり前の暮らしを、あの310万人の日本国民を犠牲にした戦争を2度と起こしていけない。憲法を守り抜こう、暮らしと平和と民主主義を守り抜こうという、立場を越えた広範な府民が結集しているのが、「民主府政の会」です。
 そして、そういう党派を超えた広範な府民のみなさんと、国政でも地方政治でもスジを通して、どんな問題でも府民の立場にたって奮闘する日本共産党とは力を合わせる。この広範な府民と日本共産党の共同の力こそが府政を転換する、みなさんもっとも確かな保障じゃないでしょうか。
 革新京都、「日本の夜明けは京都から」と私たちは輝かしいスローガンを掲げ続けてきました。今度の知事選挙、このスローガンにふさわしく革新京都の心意気と良識を示そうではありませんか。季節は春です。今度は私たちのがんばりで政治の春を呼ぼうじゃありませんか。