一座の歩み 重ね合わせ 『出雲の阿国』 来年1月4日~11日、京都劇場/前進座創立95周年記念京都初春特別公演

3代目阿国役・浜名実貴さんに聞く
来年(2026年)創立95年を迎える前進座は恒例の京都初春特別公演を2026年1月4日から同11日まで京都劇場(京都市下京区)で行います。演目は「歌舞伎の始祖」阿国の生涯を追った有吉佐和子の小説を原作にした『出雲の阿国』。主役の浜名実貴さんに作品の見どころ、上演に向けての意気込みなどについて聞きました。
「みんなが憧れる役。自分にやらせていただけるとは思ってもみませんでした」
歌舞伎を中心に上演してきた前進座で、女性が初めて主役を演じたのが『出雲の阿国』です。1972年初演。いまむらいずみさんが初代阿国役、2代目を妻倉和子さんが務め、今回、16年ぶりの再演です。
時は桃山時代。出雲大社の御札売りから始まった阿国一座の念仏踊りが四条河原で人気を博し、阿国の夫・皷師三九郎(嵐芳三郎)の才覚により淀君の前で踊るほどに。
男姿の阿国と猿若座の道化方だった伝介(松井誠)の女装の踊りで舞台は活気を帯び、阿国を慕い出雲から上洛したお菊(有田佳代)も加わった芝居仕立ての舞台は「阿国歌舞伎」と呼ばれるようになります。しかし、庶民の前で踊りたい阿国と貴人に取り入ろうとする三九郎との間に心の隔たりが…。三九郎は勝手に小屋を売ってお菊と江戸へ、傷心の阿国は、伝介らと故郷の出雲に帰ります。
阿国は、たたら鉄の製造で生じる砂が大水の原因になっていることを知り、たたらの長・田部荘兵衛(藤川矢之輔)の前で踊り、砂止めの工事を願い出ます。
伝介役で特別出演する松井誠さんと前進座の共演は、創立80周年公演『十六夜清心』以来、15年ぶりです。
「コロナ禍を経験したことが、前回の舞台と大きな違いだと思います」。『出雲の阿国』では、一座のお松を連れ戻しにきたおばあさんから「そんなことして何になるんだ。誰の腹がくちくなるか」と言われる場面があります。
コロナ禍で、舞台は「不要不急」だとして公演が中止となり、舞台は人々にとって必要なのか自問自答し、「舞台は人間が人間らしく生きていくために必要なもの」との確信を改めて得た自分たちの経験と重ねます。

95周年記念の公演。「お客様やいろんな方の手助けがあって続いてこられた。今、厳しくて大変ですが、みなさんに支えられ、乗り越えたところに新しい世界がある。阿国一座と重ねて演じたい。私の阿国をつくり、次代につなぎたい」
京都初春特別公演は49回目。「前進座に入ってから毎年のように京都でお正月を過ごすようになりました。阿国が歌舞伎を始めた京都で、また、慣れ親しんだみなさんの前で阿国を演じられるのは光栄です」
1等席10500円、2等席5500円、3等席3500円。問い合わせ☏06・6212・9600(前進座。平日午前10時~午後5時)。前進座ウェブサイト
11月(日)に共産党後援会新春観劇のつどい
11日(日)午後3時半。1等席7200円、2等席4000円。同後援会☏075・211・5371。



