大型横断幕を手に宣伝する住民(7月26日、京田辺市)

参加した住民“「白紙委任しろ」では納得できない”

 陸上自衛隊祝園(ほうその)分屯地(精華町、京田辺市)への長射程ミサイル保管用大型弾薬庫14棟の新設計画を巡り、今月にも造成工事が始まろうとするなか、近畿中部防衛局は7月22日に京田辺市、24日と26日に精華町で、初めての住民説明会を実施。防衛省は保管する弾薬の種類などについて説明を拒否したため、住民から批判が相次ぎました。

 防衛省からは、近畿中部防衛局、陸自・中部方面総監部、祝園分屯地の各幹部、京田辺市と精華町からも職員が出席しました。

 近畿中部防衛局の企画部長らが、「陸上自衛隊祝園分屯地における火薬庫等整備に係る工事について」と題したA4判11㌻の資料をもとに、▽なぜ、祝園分屯地に火薬庫を整備するのか▽整備される火薬庫の形式▽工事期間▽工事内容─などについて説明。

「長射程ミサイル保管は」「基地内のどこに造るのか」

 祝園分屯地に大型火薬庫を新設する具体的理由については明らかにしませんでした。工事内容については、14棟中8棟は、8月に造成工事に着手し、2026年度内に完成。本体工事は、26年度に着手するとしました。

 住民からは、長射程のミサイルを祝園弾薬庫に保管するのかどうかについての質問が多数出されました。

 分屯地近くで稲作をしている京田辺市の住民は、防衛省がトマホーク400発の取得を決め、舞鶴のイージス艦へのトマホーク搭載や、今回の弾薬庫も海自との共同使用も明らかになっているとして、「心配なので(分屯地内の)どこに弾薬庫をつくるか教えてほしい。長射程ミサイルが保管されるのか、はっきり聞かせてほしい」と質問。

 別の住民は「トマホークが来年から配備される。14棟も増設する祝園分屯地に長射程ミサイルの保管・管理がされると考えるのは当然。保管するのかどうかあいまいにせず説明を」と迫りました。

 防衛省は、長射程ミサイルの保管について、「個々の火薬庫に保管する弾薬の種類や量については、その詳細を示すことにより、自衛隊の能力が明らかになるおそれがあるため、具体的に示せない」との回答に終始しました。

 これに対して、住民は「何を置かれるのかも分からないことに、白紙委任してくださいと言われても、納得いきません。住民に主権がある。防衛省の人たちは住民主権をどう考えているのか」、「弾薬庫を増設しないという『確認書』を守りましょう」などの批判が相次ぎました。

精華町の説明会に出席した防衛相近畿中部防衛局幹部ら

 新たな弾薬庫の安全性について防衛省は「火薬類取締法に基づく必要な保安距離も十分確保できる」と説明。住民が具体的な保安距離や弾薬庫の壁の厚さなどを質しましたが、これにも防衛省は、「明らかにすると、自衛隊の能力が明らかになるおそれがある」と回答を拒否しました。

「『機密』だから言えない」説明会は破綻

 京田辺市の説明会では、最後に男性が、「どんな弾薬を入れるのか、火薬庫の配置とか、全然示されない。国の機密だから言えないということばかりで住民は納得できない。この(説明)会はもう破綻している。まず工事を止めて、もう一度住民が納得できる説明会をやるのが筋」と発言し、会場から大きな拍手が起きました。

 京田辺市の担当者が、指定の時刻が過ぎたとして終了を告げると、会場から「納得できへん」「なんやそれ」「勝手に終わらすな」などの怒号が飛び交いました。

 京田辺市の担当者は「防衛省に要望を伝える」「(説明会を再度)やる方向で前向きに検討する」と述べました。